一番星を追いかけて

そばあきな

一番星を追いかけて

 今日は何年に一度からしい流星群の夜だと朝のニュースでやっていた。


「あの丘で流れ星に願えば願いが叶うらしいよ」

 アイツのその言葉に連れられ、俺はアイツと二人夜の中を歩いていた。


 目の前の背中は、躊躇なんてどこかに置き忘れたかのように、迷いのない足取りで先を歩いて行く。今は後頭部しか見えないが、今夜の空みたいな一点の曇りもない前だけをまっすぐ見るあの目もきっとしているのだろう。


 それを想像すると、引っ張られる手が、急に自分のものじゃない感覚になる。

 始めはお互いライバルだと思っていた。

 しかし、気付いた時にはアイツはずっと俺の一歩先を行き続け、俺はその後を追いかけていた。

 勉強も運動も人望も、いつの日か追いつけないと悟ったのは俺だけで、アイツの方はいつまでも俺を同等のライバルだと思っているのだから笑えなかった。


「これからも一緒に高みを目指していこうな」


 丘の頂上を登り切って振り返ったアイツが、心から俺の実力を信じ切った表情で笑いかける。


「きっと一緒には目指せないよ」という言葉を飲み込んで、俺は常に一歩先を行く隣の一番星に視線を移して「そうだな」と笑った。

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