常世と現世と月結び〜薬師見習いの私は、世界の崩壊を止める旅をはじめます〜

杉崎あいり

第1話 プロローグ

 凍てつく白魔が荒れ狂い、世界は闇に包まれた。

 一寸先も見えない吹雪の中、懸命に歩を進める者が二人。

 尖った狐耳と立派な尻尾を持つ青年と、ヘーゼルの髪と瞳を持った人間の女の子だ。

 二人は迷いない足運びで雪山を下っている。


 不意に女の子がふらつき、小さく声を上げた。

 どうやら、ごうごうと吹き付ける横風に足をすくわれたらしい。

 そんな彼女を引っ張りあげた青年が、大事そうにその細い肩を支えた。

 二人は互いを守るように寄り添い、微笑み、そうしてまた歩き出す。

 

 目指す先は雪に紛れて見えなかったが、彼らの目に不安はなかった。

 降り止まない雪に呑まれることなく、二人は足を動かし続けた。

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