第29話 目まぐるしい一年間

         目まぐるしい1年間

 1886年1月

 小官が効率の良いアルミニウムの製法を提唱、電気分解を利用した方法で、一度に大量のアルミニウムを高純度で精製出来るように成った。

 益田製法と名付けられた。

 史実では2月に、ほぼ同じ時期にアメリカのチャールズ・マーティン・ホールとフランスのポール・エルーと言う人物によって発明され、全く同時と言っていいタイミングで特許申請された為にホール・エルー法と名付けられた物であった。

 ホールとポールなのでほぼ自分の名前になったポール・エルーは勝った気になって居たかもしれないと思うのは小官だけではない筈だと思う。

 脱線したが、ぎりぎりタッチの差で小官が申請を出していた為にこのちょっとネタっぽい名前になる事は阻止されたのだ。

 同1月

 カール・ベンツがガソリンエンジン搭載自動車を作ったが、小官によって既に実現されて居たので今後小官へ特許料を支払う事に成る。

 因みに3輪自動車だった。

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 3月

 ゴットリープ・ダイムラーが4輪ガソリン自動車を製造、此方も小官によって実現済みなので小官の懐はますます潤ってしまう。

 アメリカはシアトルにて、在米清国人への差別や弾圧に対する暴動が発生。

 アメリカは割としつこく人種差別を繰り返す、これは政教分離と同時に無くして行って欲しい物である。

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 4月

 文化的遺産や芸術品、美術品等を守る事もこれからはもっと必要になると感じていた小官が常々伯爵様にお願いして居た、文化遺産保護法と著作権法の二つが新たに大日本帝国憲法に正式に掲載され、国際法としても検討される事となった。

 4月、5月、6月

 小官の発明が悉く一歩以上先を行って居るので、そろそろ各国の企業のトップや発明家、国王等の国家主席達が苛立ちを見せているようだったので、ここは小官のポケットマネーでご招待をして我が国と小官を理解して貰いたいと思い、3か月間で概ね知る限りの発明家企業家政治家を都度招いて一週間づつのツアーを企画、お越し頂けなかった方々も予想以上に居たが、来て頂いた方々には概ね高評価だったと思う。

 小官の使い切れない程膨れ上がって居た財産を半分程消費できた、この招待を受けて気に入って頂き取引をしたいと言う企業も出て来たので日本国もますます発展する事だろう。

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 7月

 史実ではこの辺りからコレラの大発生が始まり8月7日には東京と神奈川が流行地として指定されるのだが、北里殿のお陰で6月に予防接種を実施して居た事と、間に合わせ治療薬のペニシリン、そして北里氏の渾身の治療薬の量産が可能になって居た為、これを回避する事が出来たのだった。

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 8月

 長崎事件発生。

 清国海軍が大型艦の修理と補給の為に、付近に入港出来るドックが他に無かった為に入港したのだが、水兵達が日本の許可なく勝手に上陸。

 挙句、これ見よがしに交番の前で立小便をしての挑発、娼館の順番待ちを無視しての乱入、婦女子を追い回しての乱暴などを始めた為に、当時の警官は帯剣と自動拳銃所持を認められていた警官隊によって全員逮捕、強制送還となるのだが、その最に大乱闘となりどちらにも死傷者が出た。

 清国側はこれに対する謝罪を拒否、警官隊の帯剣を非難したが、史実とは立場が逆で最新鋭装備をした日本側に優位性が有ったため強気に出た日本政府は強引に損害賠償を請求、清国と本格的に関係が悪化し始めてしまう。


 同8月

 朝鮮は、清国及び、日本、西欧を牽制する為に、ロシア帝国に軍事援助と支援を求める書簡を送ったのである。

 だが清国からの、敵対行為であるという抗議と報復を恐れた議員が裏切り、9月に入り清国へと告げ口をした事で、国際問題へと発展。

 ロシア帝国は、書簡を受け取った事は認めたが、支援等に関しては当方は一切関与しないとの見解を公表し、事無きを得たのだが、清国は一方の長崎事件の一件で苛立って居たのでほぼ八つ当たりの様に突っかかって行って居るようだった。

 いやはや、令和の時代に成ってもそんな体質がそのまま残ってるんだね、このお国って。

 一寸強そうな国が有ると尻尾振ってすり寄って、そんで相手にされないと裏切るんかいな・・・

 これだけ行動が一貫してるとある意味関心するね。

 やはり小官の撤収策は間違って無かったかも知れない、折角見守ってたのに呆れるばかりだ。

 っていうか、本当に治るかなぁ、この国のこの性格、何か自信無くなって来たな・・・

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 9月

 機務六条が定められた。

 明治天皇と伊藤博文(内閣総理大臣兼宮内大臣)が内閣を代表する形で交わした約束事だ、これによって天皇と内閣の関係を規定すると同時に、明治天皇が親政の意思を事実上放棄して、天皇の立憲君主としての立場を受け入れることを表明した。

 後日お忍びで小官の前に現れて、口惜しい事なんか無くむしろ肩の荷が下りた思いだと笑って居られた、本当に大きなお方だ。

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 10月

 スペイン帝国が植民地化していたキューバにて奴隷制度を廃止。

 小官の考え方に好感を持って奴隷の居ない世界を目指そうと誓って下さった天皇陛下がこれに好感を持つ。

 大使を送るが、あまり良い感触は無かったようだ。

 好戦的な国である事に変わりは無かったようである。


 同10月

 キリスト教国家同士と言う事でフランスがアメリカへと贈った自由の女神が完成、アメリカ合衆国のシンボル的存在となる。

 因みに讃美歌で歌われているサンタルチア(聖ルシア)は、キリスト教では聖人とされ、所謂人であるとされて居ますが、その正体はギリシャ正教でも登場する光の女神です。

 キリスト教は、救世主として人から出た聖人イエスキリストと聖母マリアばかりがクローズアップされがちだが、天使や聖人と置き換えられただけで多神宗教である事には変わりは無いのだ。

 人の子である仏陀がクローズアップされた仏教との共通点がここにあったりする。

 余談だがキリスト教と仏教の共通点と言えば先ほどちょっと触れた聖ルシアであるが、仏教の廬舎那仏(るしゃなぶつ)も光の仏らしい、呼び名も似ていることを踏まえても共通項が多いので恐らく同じ神であると思われる。

 ちょっと脱線したが、それにしても史実でも当時フランスってキリスト教を前面に押し出してる筈なのに実はまだイスラム教の方が根強かったりするのだが、その辺はどう処理して居たのだろうか。

 そもそも政教分離を早々に提唱している小官の理解の範疇と想像を超えるギリギリのバランスである事には恐らく変わりは無いであろうと思われる。

 もしもフランスと本格的に事を構えるような事に成ったらこの宗教的な微妙なバランスを崩してやったら割と簡単に崩れるかもしれないな・・・

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 11月

 関西法律学校(後の関西大学)が開校。

 これによって後進が育ってくれるだろうと司法卿である大木伯爵殿が胸を撫で下ろしていた。

 ご本人はそろそろ引退だとか言って居られたがまだまだお若く在らせられると思うので寂しい事を言わないで頂きたいとちょっと思うのだ、史実ではもう間もなく隠居されてしまうが、小官がお手伝いして居るのだからせめて一度くらいは総理の座に・・・

 同11月

 万国赤十字条約への加盟。

 負傷者の救済など、小官が徹底して欲しいと陸軍海軍共にお願いして実際にそのようにして頂いている筈なのでもう加盟して居るとばかり思って居たが、史実通りの時期になった、解せぬ・・・

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 12月

 やっと腰を落ち着けられると思ったらもう師走では無いか・・・

 なんと目まぐるしい年であった事か・・・

 しかも最近、海軍大将閣下はお歳も有って、体調が優れないらしい、床に臥せることが多くなった。

 そうりゅう型と迄は行かずとも早いとこ潜水艦を完成させて、見せて差し上げたいと思って居る。

 日清戦争迄後およそ7年、装甲車両位迄は配備が完了しそうな気がしている今日この頃だった。

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