第16話 おやすみ

「ん…幸牙ぁ…」


「永太…」


 俺達は白い霧のかかる謎の場所で、抱き合っていた。


「ん…そこ、だめっ…」


「いいだろ…このくらい…」


「ちょっ、まっ…」



 ピピッ、ピピッ。


「っふぁ!?」


 あ…夢?なんだ、夢か…。…何か、夢で良かったような良くなかったような…。現実じゃありえないことだけどさ。


 アラーム止めて、寝ている間にメールが来てないか確認する。


 すると。


「おやすみ」とメールで送られて来ていた。差出人は…。


「こう、が?」


 そう、幸牙からだった。やばい、朝から心臓がバクバク言っている。幸牙が、俺にメールを…。好きな人からのメール、誰しもドキドキすると思うの。俺だけじゃあないはず。うん。


 俺は朝の支度をしている時も、いつもより明るく支度が出来たような気がする。そして、上機嫌のまま家を出て、会社へ向かった。




 ~縁丸駅にて~


 俺は電車を待っている間、スマホをいじっていた。俺が見ているもの?あぁ。け い ち ゃ ん の 隠 し 撮 り 写 真 。と言っても、会社で撮ったやつだからムフフな写真はない。前に泊まりに行った時は、撮る暇がなかったし。


 って、ん?


 あ、幸牙くんだ。家、この駅の近くなのかな。話しかけてみよ。


「おーい、幸牙くーん」


 幸牙くんはスマホに向けていた目線を俺の方に向ける。


「おはよー」


「…」


 相変わらず無口だなぁ。数少ない俺の同期だからタメで話せる内の1人なのに。


「今日いい天気だねぇ」


 今日は雲1つない晴れ模様。澄んだ青い空が広がっている。今の季節が秋なので、調度良い気温だ。幸牙くんは、相変わらず黙ったままだ。まぁ軽く会釈してくれているから、完全に無視している訳ではなさそう。多分本人は無自覚だけど。


 その時、調度電車が駅に到着した。


「あ、電車来たよ、乗ろっか」


 この時、幸牙くんが「おう」と、小さいで言ったような気がしたが、多分気のせいだ。俺達は電車に乗り込み、立ノ瀬駅に向かった。今日はどんな一日になるのかな。いや、今日はどんなけいちゃんの姿が撮れるかな。

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