【小説】東大入試
紀瀬川 沙
序文
或る人の小説を読んで、試験というテーマにその作とはまったく異なった方向から取り組みたいという思いがふつふつと湧いてくる。
折から、都の西北で何やら面白い騒ぎが起こる。
早大生が試験における自らのカンニング行為をツイートし、それを担当教授が発見・摘発したという。その善悪は私の関心の埒外で、顛末の滑稽さだけに興味を引かれた。高田馬場で出来したこの剽軽玉をいかに別のものに変えられるか。ダイヤモンドや水晶である必要はない。鉄球、あるいは真鍮にでも変えることができたら満足だ。
具体的な方法に考えを進める。俯瞰して書くか。自在である反面、いまいち迫真の勢いに欠けやしないだろうか。他人事を短くまとめただけのようで、退屈でありやしないか。いっそ自分の問題に換骨奪胎して告白したらどうだろう。具体性を高めて現実に近づける。近づけてなお、文中に真偽に関する言及は一切不要、ただ着々滔々井々淡々と筆を走らす。それがいい。また、やりやすくもある。そうと決まれば、善は急げだ。
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