いきみち

呉 那須

上 へんてこなせかいとへや

 部活帰りに空を見ると猫のホームベースが黒いクレヨンではさみ町を角から塗り潰していました。クレヨンには紙が巻いてないから折れちゃわないか、はらはらさせられました。

「ねぇ、どうしてそこは真っ暗なの?」「見りゃ分かるだろ」「数Bの課題急いでやんなきゃなんだけど」


 無視されました。


 塗ってる理由なんて教えちゃくれなそうな態度だったので、アスファルトに体育座りをして町が黒くなるのを眺めていました。

「なんで塗ってるか聞かなくていいのか」「ぜってぇ教えてくれなさそうじゃん」「なぁ」「なに」










「全てを憎んだ少女はもう一度だけでもこの世界を愛せると思うか?」









「何を突然」「やっぱいい」

 と言って消えたと思ったら私の目の前もフツンと真っ暗になりました。


 



 スカートについた砂利を払って真っ暗な世界を歩いてみるけど、どこにもぶつからなくてまっすぐ歩いてるの?カーブしてるの?頭が風船みたいにぷかぷかしてきたので、頬をパチンと叩く。わたしの名前は原田光はさみ高校2年4組25番。うん、大丈夫。顔も割れずにちょっと痛いだけだったので、てとてとまた歩き始めました。

 少しずつアスファルトの感覚がなくなってきて、もしかして大嫌いなトマトの上を歩いてるんじゃないかと不安になってきました。

 


 遠くの方にくるくると回る光があったので不安定な足場の中早歩きで向かうと目がピカピカで尻尾を噛んでる蛇がいました。


「いやきも」


 だけどわたしの事を噛む事はどーせできないしいいかなとカイチューデントーがわりに蛇太郎と名付けました。

 

 ちょっと進むと、目の前にはどこでもドアよろしく扉だけがポツンと置いてありました。違うのは未来感のない灰色で郵便口から紙がはみ出ていた事。蛇太郎を寄せてよく見ると請求書からねりゆもの会などと書かれた紙ばかり。どれもよろしくなさげで、だけど行くあてもないので恐る恐るドアノブを引きました。蛍光灯の光が一気に目に差し込んできました。

 

 目を何回かパチパチとするとここがゴミだらけの汚ねぇ部屋であること、はさみ小の黄色い帽子を深くかぶってる女の子がいることが 分かったけどそれがどうした?って感じで何も状況を掴めませんでした。


「ねぇここどこか分かる」頷きも返答もなく虚ろな目で震える少女に愛らしさはなくて、というかよく見ると服はボロボロ体中傷だらけ下着からも血が出てて少し不気味。目を逸らして辺りをも一度見返す。

 ペットボトルとか空の弁当はとかくに価値があったはずの服や本もこうも溜まればただのゴミになっていって、ここに住んでる人もきっとそうなんだと考えてるとガチャリと扉の開く音がする。恰幅のいいハゲたランニングのおじさんが部屋に入ってきました。

 

 すると少女は助走をつけて勢いよくおじさんを扉の外へ両手で押しだしました。

 


 扉の外にあったのは車道でおじさんはトラックに轢かれました。ナポリタンみたいににコロコロペチャリと転がってました。少女はそれを何度も踏みつけていて、わたしは思わずしゃがみこんでしまいました。

 ヤバくね?ナポリタンの中から液状化してでゅでゅどろとした袋が出てきました。中からはおぎゃおぎゃと泣き声が聞こえる。よく見るとそれは子宮を模したゴミ袋で中に赤ちゃんなんていなくてただ虚しくなりました。ゴミ袋も「あの子も無茶するよね全く」とケチャップを被りながら達観したことしか言わない。

「大丈夫?」「んなわけ」「やゴミ袋さんじゃなくて」そっちも気になるけど


 ナポリタンを踏まないように少女に近づく。


「えーと、大丈夫?」「お姉さんにはそうみえるの?」「やまったく」「だよねー」笑ってる。こわ


「でも心配してくれてありがと」


 と言ってどこかに消えてしまい、わたしは蛇太郎頼りの暗い世界に戻りました。

 

 なんだったんだ今のと思ったのも束の間、地面が水みたく溶けて体は一気に沈みました。

 





  激ヤバと蛇太郎を強く握って水面?に

上がるとホームベースがオールを持って仁王立ちしていました。




「まだこんなとこにいるのか」「あホームベースじゃん早く助けて」「早く助けに行けよ」「へ?」会話のキャッチボールが成立しない。


「ねぇ誰んこと言ってんのわたしを助けてよ」





「お前なんとなくわかったろ。あいつがクソ汚ねぇハゲにぶん殴られ犯されたことも復讐でぶっ殺したことも」  




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