からあげ
オレオ
第1話恋も唐揚げも、中身は熱々。
告白には色々ある。
放課後、校舎裏で告白。文化祭のクライマックスで告白。メールでの告白。最近ではレストランでのサプライズ告白。
どの告白も驚きはすると思う。でも、やっぱり一番驚くのは、全く意識してない、長年一緒に過ごした幼馴染からの不意の告白、これが一番驚くのではないだろうか。
その中でも、熱々の唐揚げを口に押し込まれ、口を動かすこともできず、ただその言葉を聞くだけの告白なんて、悲惨としか言いようがない。俺は、あの時の自分の状況にそう思った。
「ね!
「何だ?……っ!」
制服のまま、放課後の商店街を幼馴染と歩いていると、少し前を歩いていた幼馴染の
「幸田! 私と付き合え!」
「ふぁ! なに…いって…」
唐揚げのせいでうまく喋れない俺を見てニコニコしながら、幼馴染は俺を置いてどこかへ行った。
「あいつは何を言っているんだ?」
熱々の唐揚げを食べ終え、その意味をあまり理解していない俺は自分の家に帰った。
「ただいま――」
玄関を開けると部屋着の妹がそこにはいた。
「……」
「なに?」
「いや、なにもない」
「あっそ」
ここ一年、妹とまともに会話をしていない。
前までは仲のいい普通の兄弟だったのに、俺が高校に上がると同時にあいつはまともに喋ってくれなくなった。
「あ……」
靴を脱ごうと下を見ると、見覚えのある女性の靴があった。
まさか……
「
「あっ! 唐揚げ先輩お帰りなさい!」
こいつは同じ高校の後輩の
ちなみになぜ尾野美杏が俺を唐揚げ先輩と読んでいるのかというと、俺の名前が
このあだ名を付けたのは尾野美杏ではなく、鶴味なのだが、いつの間にか学年を問わず俺のあだ名は知れ渡っている。
「唐揚げ先輩、ご飯にします? お風呂にします? それとも……」
そう言いながら、頬赤らめた尾野美杏は大きな胸を俺の腕に押し付けてきた。
「わ・た・し?」
「じゃ、お前にする」
「ふぇ!」
驚きのあまり、変な声を出した尾野美杏をその場に残し、俺は自分の部屋へ向かった。
毎日俺をいじってくる尾野美杏を逆にいじり、その反応を見るのが最近の日課だ。
「あ。そういえばさ、今日鶴味の買い物に付き合ってたら、『急に私と付き合え!』って言ってきたんだよ。他に買うものもなかったし、しかもそのままどっか言っちゃうしさ。ほんと何がしたいのかよくわからん」
「え? 唐揚げ先輩、その話ガチですか?」
急に真剣な表情になり、どこか怒っているようにも見えた。
「ああ。そうだ」
「先輩って、馬鹿ですね」
「は?」
特に馬鹿みたいな発言をした覚えがないのだが、なぜが呆れたように馬鹿に馬鹿と言われてしまった。意味がわからない。
「それって絶対告白ですよ!」
「告白? 告白ってあの放課後、校舎裏で告白とかの告白?」
「はい」
「文化祭のクライマックスで告白のあの告白か?」
「そうです」
「そんなバカな……」
ふと思い返してみると、あの時確かに頬赤らめていた気がする。
もし本当に、あれが告白なのだとしたら、俺はなんて返事をすればいいんだ……。
「ま、そんなに悩まず好きなように返事をすればいいんじゃないですか?」
そう言って、尾野美杏はキッチンへと戻っていった。
「いった! あ! お皿が!」
皿の割れる音がしたのと、あいつがものすごく動揺していたのは、鶴味の告白によっぽど驚いたからだろう。
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