1992年5月4日(月曜)多笑、悪童に出会う。 

 その日はゴールデンウィークの中日(ナカビ)という事もあり、『多笑居』は大変に混んでいた。

1992年の今年、バブル景気は完全に終了し、日本はこれから未曾有の大不況に突入する。

最近、テレビでそんな予想を熱弁するコメンテーターをよく目にするが、なんのその。

バブルはまだ生きている。


 仮に、世間で言われているようにバブル景気は完全に終了したのだとしても、またすぐに復活する。

そう確信してしまうほどにその夜、我が店は満員御礼、大盛況だった。

頭に黄色いバンダナを巻いた大学生アルバイトの明美が店内を駆け回っている。

明美は少し天然だが真面目で良い子だ。多笑は彼女を信頼していた。


 賑わう店内の奥の座敷席に3人の坊主頭が座っている。

青坊主スリーだ。

田野中学の2年生、阿藤暴馬、堤弥太郎、高井陽介、長田界隈ではとても有名な3人だ。

悪い方の意味で。


 ごんたくれ3人が気になりながらも、多笑は明美と共に無難に店を回していった。

そして、9時前頃事件が起きた。

出入口付近のテーブル席に居たチンピラ風の男達、オールバックの細目、パンチパーマの眉無し、パンチパーマのサングラス、頬に傷痕がある角刈りの4人組が、

「ねーちゃん、店弾(ヒ)けたら飲みに行かへんか。なんやったらラブホ行くけ。それとも青姦がええか?」

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