第194話ハーパー
「おい、ハーパーお前に王宮から呼び出しが来てるらしいぞ」
ジョンはハーパーの囚人部屋へと向かうと声をかけた。
ハーパーは床に布を敷いて昼寝をしていたようで、眠そうに振り返ってジョンの顔を見た。
「えー王宮から?俺この国に知り合いなんていないんだけどなぁ~」
面倒くさそうに起き上がるとノアがお決まりの定位置の肩にちょこんと乗った。
「お前…がなんかする訳ないしなぁ、でも王都にはミラもビオスもいる、もしかしたらそっち関係かもしれないぞ」
「まさか…」
ハーパーは少し考えたあとサッと用意をしてジョンのあとをついて行った。
「おまたせしました、ハーパーを連れてきました」
ジョンが来賓室の扉にいた兵士達を退けて声をかける。
どうぞと言われると、扉を開いた。
「じゃあ俺はここまでだ。何かあれば俺はお前の味方だからな…好きにしろ」
ジョンは扉で影になった隙にそっとハーパーに囁くとその場を離れた。
ハーパーは頷くと部屋へと入る、見ればそこには一人の男にそれを護衛する兵士と反対側にケイジ看守長がいた。
ハーパーはケイジ看守長に軽く会釈すると…
「ハーパー、ここに座ってください」
テーブルから少し離れた椅子を示される。
ハーパーは頷くと席に腰掛けた…
「それで?なんで呼ばれたんすかね?」
使者を無視してハーパーはケイジ看守長に声をかけた。
「どうも君の力を借りたいと王宮の方々からのご指名らしいですよ」
「王宮?なんで俺に…それって断れますか?」
はなから行く気のないハーパーは断ろうとしていた。
「なっ!!王宮からの要請を断る気か!」
使者達がハーパーの舐めた態度に怒りを覚えて声を荒らげた。
「だったらどうだってんだ?捕まえるってか?だが残念もう既に捕まってるけどなぁ」
見た目は少年のようだがその表情と話し方は成人男性の様なアンバランスな男は使者を挑発するように見つめる。
「くっ…もし渋るならこの手紙を渡せと言われてある…」
使者はもう一通の紙を渋々差し出した。
それは先程の書状とは違い普通の手紙に見えた。
「私が見ても?」
ケイジ看守長が聞くと…
「これはハーパーだけにと言われている。ハーパーが見て良しとすれば好きにするといい」
ハーパーはわけがわからずに首を傾げながらその手紙を受け取った。
「中を見ても?」
「どうぞ」
ケイジ看守長にも確認するとこくりと頷き頷かれる。
ハーパーはその紙を開くと目を見開いた!
「これって…」
持ってきた使者を見つめるが首を横に振られた。
「何を聞かれてもわからんぞ、私は預かってきただけだからな。もし何か聞きたいことがあるなら王宮へと来い」
ハーパーは少し悩むと…
「行くか、妹の頼みみたいだからな」
にやりと笑った。
「妹?」
使者もケイジ看守長も首を傾げた。
ハーパーはかなり昔からこの収容所に入っていたがここに入ってからの資料によると誰一人面会人などいなかったからだ。
「妹なんていたのですか?」
使者も手元のハーパーの資料を確認するがそんな記載は書かれていなかった。
「まぁな、じゃあ早速行くか?早い方がいいんだろ?」
ハーパーは立ち上がると手を差し出した。
ケイジ看守長はハーパーに手枷を付けると使者にハーパーを引き渡した。
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