第163話子供…

その後も当時の事を二、三質問されて私はあっさりと解放された。


「また話を聞くとがあるかもしれないが…」


「はい、大丈夫ですよ」


私は構わないと笑顔で頷く。


「ありがとう」


オバジ様がお礼を言うと


「では私がミラをイーサンの元に送って来ます」


ファイさんが立ち上がって私の椅子を引いてくれた。


私はぴょんと椅子から飛び降りる。


「いやお前にはもう少し聞きたい事があるからここに残れ、この子は…ロードお前が送って来るんだ」


オバジ様がファイさんに笑いかけた…なんか怒ってるように感じるのは気のせいかな?


私に向ける瞳は優しいので気が付かなかった振りをしてロードさんの後をそそくさとおった。


「ではミラ様はこちらに…」


扉を開いて部屋を出ようとする時にそっと振り返るとファイさんの困ったような顔が見えた…


頑張れー


心の中でエールを送り私は部屋を出た。


足の長いロードさんの後を必死に追いかけて行くと…


ピタッ!と急にその足が止まった!


「わっ!」


ドンッ!


驚き慌てて止まったがその足にぶつかってしまう。


「す、すみません…」


ぶつけた鼻をさすって謝りながら上を向くと…


「あなたは一体何者ですか?」


ロードさんが軽く疑う様な眼差しでこちらを見下ろしている。


落ちそうなメガネをクイッとあげるとキラリと光った。


「何者…ってただの子供ですけど…」


「いえ、私の知ってる子供は少し睨めば泣き、話を聞かずに数分も大人しく座っていることも出来ないものです」


「そこまででは…」


どんだけやんちゃな子の世話をしたんだ…


「今のはファイ様の事ですけどね」


「ぶっ!」


ロードさんの言葉に吹き出してしまった!


ファイさん…どんな子供だったんだ…


「今でもファイ様は好き勝手にしますが…あんなにあなたを気にかけるとは…」


「ファイさん…様ってあんまり王子っぽくないですもんね」


ご飯を食べてるファイさんを思い出しながらしみじみと言うと


「ええ…い、いえ!そんな事はありません!最近は少し王子らしくなって来ましたから」


「ロード様今ええって頷きかけましたよね?」


じとーっとロード様を下から覗き込むと目をそらされた。


「わ、私はただあなたといる時のファイ様が少し王子らしくなった事に疑問を感じただけです…何かしたのかと思いまして…」


「うーん…特になにもしてないですね。うちに来る…ってもう内緒にしなくていいですよね?」


一応確認すると


「はい、きっと今頃 国お…オバジ様が問い詰めてらっしゃるでしょうから」


今…国王…って言いかけた?


ため息をついて聞かなかった事にしてロードさんを見る。


「まぁいっか…そうですね…ファイ様がうちに来る時は王子と思ってないです。普通の近所のお兄ちゃんとして対応してます」


「王子をお兄ちゃん…」


「だってここでは王子を嫌でもしなくちゃいけないんですよね?ならうちに来た時くらい羽を伸ばしてあげたいし…縛りつけるだけだと余計に反発するんじゃないですか?……なーんて…」


思わず本音で話していると、唖然と口を開けて固まるロードさんに話を途中で誤魔化してみたがダメそうだ…


「確かに…それと王子の言っていた夢中になる食事とやらも気になります…」


ロード様の真剣に考え込む顔を見て長くなりそうだとため息をついた。



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