第160話あれだよね…

オバジ様の立場を何となく理解して私はゴクリと唾を飲み込んだ。


さすがに緊張する…


そんな私の様子を感じとったのかオバジ様が目じりにシワを作って優しく笑った。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、君が被害者なのはこちらもわかっている」


「は、はい…」


「あの時の事をもう一度話して貰えるかな?」


どうやらミラージュの話は無くなったみたいだ…ファイさんがほっとしているのがわかった。


しかしオバジ様は…


「その後でミラージュの話も聞かせて貰うよ」


「はい」


私は構わないと頷くがファイさんは不満そうにしている。


「ち…オバジ様、先程も言いましたがお店の事と事件の事は…」


ファイさん…今父上…って言おうとしなかった?


内容よりそっちの方が気になる。


「君はこれ以上口を挟むなら出ていってくれても構わないよ?別に強制的に話を聞くつもりはないとわかってるよね?」


顔は笑っているがオバジ様から不穏な空気を感じる…怒ってる?


ちょっと怯えながら二人のやり取りを見ていると…


オバジ様と目が合った。


ビクッ!


思わず目を逸らしてしまった…タラっと額に汗が垂れた…


「悪かったね、話を逸らしてしまって…それで?君はどうする?」


オバジ様がファイさんに問いかける、ここに口を挟まないでいるか出ていくか…


「失礼しました…」


ファイさんはぐっと堪えて動く気はないと椅子に深く腰掛けた。


「ふー…さてじゃあ話を聞こうかな?」


「は、はい!で、でも私あんまりあの時の事は覚えてなくて…」


「大丈夫、覚えてる事だけでいいからね」


「はい」


安心してほっと息を吐くとオバジ様をじっと見つめた。


私はあらかたファイさんに話した事と同じ事をもう一度オバジ様達に説明した。


「では君を最初に連れ去ったのはブランドンなんだね?」


「そうです、大人しく着いてこないとメイドのカナリアに危害が及ぶと思い大人しくついて行きました…」


「浅はかな…そこで声を出せば店主もいたしメイドにも気づいて貰えただろうに」


ラプス大臣が呆れるようにため息をついた。


「まだミラは子供ですよ…」


ファイさんが不満そうにボソッと声をかける。


「あの店の耳が遠くて足が悪いおじいちゃんが何か出来るとは思えなかったし、外には屈強な男の人が何人かいました…多分あの男の人の連れだと思います。だからあそこは私が大人しくついて行かないとカナリアとおじいちゃんも巻き込むと思ったんです」


あの時の事を思い出してそい言うと…


「うむ…」


「ほう」


ラプス大臣は苦虫を噛み潰したような顔をすると、オバジ様が感心したように目を見開いた。


「それは…良く君のような小さい子がそこまで考えられたね…」


「父達の教育の賜物です!」


私は自慢げに胸を張った!

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