第117話外の世界

ビオスは少ししかない自分の手荷物を持つと長年入っていた牢屋をでる。


そこは綺麗に掃除して入ってきた時と同じ状態に戻しておいた。


「用意は出来たか?」


看守が迎えに来るとビオスは頷いて看守の後をついて行く。


「お前が居なくなると食堂の飯の味が落ちそうだな」


看守が笑うと


「大丈夫ですよ、残った奴らにちゃんと教えておいたので…」


ビオスの言葉にそれはよかったと看守が笑う。


そして棟の鍵を開けて外へと続く建物に入った…


ビオスはそこで足枷と腕につけられていた囚人の印を外される。


「さぁあそこをくぐれば外の世界だ」


看守が指さす方には重そうな扉があった。


看守達が四人がかりで扉を開くとそこにはケイジ看守長と知らない男が立っていた。


ビオスは看守達に頭を下げて扉を越えると…


「はぁ…」


息を吸った!


久しぶりの外の世界だ…


同じ外でもここの空気と中の空気とでは違う気がする。


ビオスが空気を楽しんでいると…


「ビオス、こちらが君の監視役のクロードさんだ。彼は街でとても人気の料理のお店を経営しているんだよ」


なるほど…


ビオスは頷いた。


「俺はそこで皿洗いでもすればいいんでしょうか?」


ビオスはケイジとクロードを見ると


「いや、君にはそこで料理を作ってもらうよ」


クロードが答えると


「いや…それは…元犯罪者が作った飯なんて誰も食べないでしょ」


状態言うなと笑うと


「本気だよ、ある人の推薦で君を雇ったんだ。その為にコネを使って君をここから早く出したんだから」


「ある人…?」


身に覚えのないビオスは首を傾げると


「まぁそれはおいおいね…じゃあ行こうか」


クロードが促すとビオスは頷く。


まぁ何をしろと言われても働くだけだ…


ビオスはケイジ看守長にお世話になりましたと頭を下げてクロードの乗ってきた馬車に乗り込んだ。


ケイジはそれを嬉しそうに見送った。



クロードは馬車の中でビオスにこれからの事を話し出す。


「君にはしばらくお店の料理長の元で店の料理の事を学んでもらう。そのあと許可が出たら店で料理も作ってもらうことになると思うからそのつもりで…」


「許可…クロード様の許可ですか?それとも料理長の?」


「それよりも厳しい人の許可かな」


クロードが苦笑すると


「しかし…先程も言いましたが俺は元囚人ですよ。店に客がそれを知ったら大変なことになるんじゃ…」


「それは大丈夫、そうなったら店に来なきゃいいだけだから」


クロードがあっさりと答えると


「そ、そしたら店が潰れませんか?客が来なくなるんじゃ…」


「あはは!心配ありがとう。でも大丈夫私の店は客がずっと入りたくて何ヶ月も待ってる状態なんだ。その程度で文句を言うなら来なくていいって言えるくらいにね」


なんだか凄い店に行くようだとビオスは冷や汗が出た…


しばらく馬車に乗って店の事など聞いていると外の風景が変わってきた。


人や建物が増えていく…ビオスは懐かしさに外を眺めた。


馬車が止まりクロードが出るとビオスもそれに続く、すると目の前に高級感溢れる建物が立っている。


「ミラージュ?」


看板にはそうとだけ書いてあった。


「そう…今日から君が働く店の名前だ…よく覚えておいてくれ」


クロードはニヤリと笑った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る