第96話夕食

その日の夕食はコロッケだった…


あの後他のメイドや従者達が匂いにつられてやって来て…屋敷はコロッケ騒動で大変な騒ぎとなってしまった。


発端はカナリア…あまりの美味しさに二個目に手を出してコロッケが食べられない人が出てしまったのだ。


騒ぎに執事やイーサン様も駆けつけてミラのコロッケがバレてしまったのだ。


「これはどういう事ですかね…」


さすがのイーサンも怒ってメイドやパッドさんをじっと見つめると…


「ミラの料理を食べるのは先ずは私ではないでしょうか?」


「えっ…」


「そこ?」


思わずミラも顔をあげると


「ミラ…私も是非ともミラの料理を食べて見たいのですが…」


「は、はい…じゃあパッドさんとまた作ってもいいですか?」


ミラが伺うように聞くと


「もちろんです、ミラの好きなようにしていいんですから」


イーサンが優しい顔で頷いた。


その後パッドさんと他の助手の人達と大量のコロッケを揚げた。


高級な油も惜しげも無く使わせてくれてミラは久しぶりに憂いも忘れて料理を楽しんだ!


ミラの作ったコロッケをイーサン様やゾーイ様が美味しそうに食べてくれる。


なんだが懐かしい光景にミラは少しずつ打ち解けていった。


その夜ミラは疲れてソファで眠ってしまっていた…その横にはゾーイとイーサンが座っている。


二人はミラの寝顔を見て微笑みながら頭を撫でている。


「よかった…よくやく笑顔が見れました」


イーサンがほっと息を吐くと


「ああ、何か追い詰めた様な、張り詰めた様な顔をしていたからな…ああいうみんなでワイワイするのが好きなのかもしれないね」


ゾーイがミラのプクッと膨れた頬をつつくと


「パッド…」


イーサンがそっとパッドを呼ぶと


「はい…」


パッドもミラを起こさないように小声で答える。


「ミラはどうやら本当に料理が好きみたいだ…きっとまた何かを作りたいと厨房に行くと思う。その時はどんな食材でも道具でも好きなだけ使わせてやってくれ」


「はい!わかりました」


「だがその際に必ず守って欲しいことがある!」


イーサンが真面目な顔でパッドを見つめると…


「これが一番大事な事だ…」


「はい…」


どんな要件だとパッドはゴクッと唾を飲むと


「ミラの作った料理を一番に食べるのは私だからね」


イーサンの言葉にパッドはズッコケそうになった。


それからイーサンの言う通りミラは厨房に入り浸った…パッドやイーサンの知らない料理を次々と作りみんなを驚かせた。



「ミラ、お前さんはなんなんだ?一体どこでこんな料理を覚えたんだ…」


パッドは次々と新しい料理を教えるミラに聞くと


「収容所…」


ミラはそう言って誤魔化した。

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