第65話黙秘

ミラはケイジ看守長に促され部屋へと入る。


ケイジはにっこりと笑うと部屋の扉を閉めた。


「鍵は開けておくよ、席も扉に近い方に座りなさい」


ミラにソファーを指さすと、コクっと力なく頷いてミラは座った。


「先ずは改めて自己紹介からかな、私はこの収容所の看守長のケイジです。ミラ…と言うお名前は本当なのかな?」


ミラは頷いた。


「じゃあミラちゃんと呼ばせて貰うね。私の事はなんとでも…」


「看守長…」


「うん、まぁ最初はそんなものかな…でミラちゃんは何故ここに?」


ミラはまた口を閉ざした。


「うーん…困ったな。何もわからないとミラちゃんを帰す訳には行かなくなるんだよね」


下を向いていたミラが顔をあげるとケイジ看守長と目が合った。


ニコリと笑いかけらる。


「やっと顔をあげてくれたね、まぁ信じて貰えないかもしれないけどミラちゃんの敵ではないつもりなんだけどな」


「わたし…どうなるの?」


ミラは看守長に聞いた。


「そうだね、ミラちゃんが一人でここに来たとは考えにくい、そして看守達がここに子供を連れてくることはまず無い。もし連れてくるとしても私の許可がいるからね。その事からミラちゃんは元からここに居た…と考えるのが妥当だけどどうかな?」


ミラはギュッと手を握りしめた。


「そして、君みたいな子供が一人でここで生きるのは考えにくい…という事は君の事を匿っていた者がいるとしか思えないね」


「ち、違う!わたし…一人で…ここに…」


「ミラちゃんはここに迷い込んだと?」


うん…ミラは頷く。


「なら、ここから出してあげよう。お父さんやお母さんはいるのかな?」


ミラの目が泳ぐ…


「わ、わかんない…ここに居た…記憶がないから…」


しどろもどろに答えると


「ふーん…記憶喪失なのかな?」


コクコクと頷く。


「では記憶なくここにいて看守に見つかったと?」


「あっ…」


我ながら無理があるなぁ…ミラは顔を背けると


「ではここを出て一番近くの街で君の親を探そうか?ここは囚人達が収容されている場所だ。子供がいるべき所じゃないからね」


ケイジ看守長の言葉にミラは泣きそうな顔で見つめる。


どうしよう…みんなの事を話せばみんなが罰を受けることになるかもしれない…けどこのまま嘘を言い続ければみんなにはもう二度と会えなくなるかも…


ジョンさんやローガンさん…メイソンさんやハーパーの顔が浮かぶ…


我慢していた大きな瞳からは、耐えきれずに涙が零れた…


それを合図にミラは大声で泣き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る