第64話ケイジ看守長
「あれ?看守長この子知ってるんですか?」
二人の様子に看守が声をかけると
「えっ?ああ…そうだね。その子私が連れてきた子だ…すまなかったね。部屋から出ないように言っておいたのに…ほら来なさい…」
ケイジはミラに優しく声をかけた。
ミラはこの人の言っている事が嘘だとわかった…けど私には助かる嘘だ…ここは話を合わせておくのが得策かもしれない。
ミラはコクっと頷くと看守がミラを下ろした。
ミラはトコトコと看守長と呼ばれた人の元にゆっくりと向かった。
看守長はよく出来ましたとばかりに頷くと
「君達も驚かせて悪かったね。ああ、そうそう今日の夕食だが囚人達に料理を作らせたからあと少ししたら手が空いてる者は食堂に行くように言っといてくれるかい?」
「食堂に?」
「ええ、料理の上手な囚人が居ましてね…食材を渡して作らせたんだよ。これがなかなかでね。皆も味わって来るといい」
「そ、そうですか…分かりました」
「囚人達の食事の時間の一時間前から用意させておくからその時間に行くように…食べたくない者やその時間に行けない者は無理して行かなくてもいいからね…でも後悔するよ…私は味見がてら頂いたけどかなり美味しかったからね」
「囚人達の料理がですか?」
看守達は疑うように見つめる。
「まぁ一度騙されたと思って行くといい、囚人達がどんなものを食べてるか知るのも大事だろ?」
看守長の言葉に渋々頷くと看守達は仲間達に伝える為に部屋を出ていこうとすると…ミラと目があった。
「そういえばその子はなんて名前なんですか?」
看守長は一瞬眉を顰める…すると
「ミラ…です」
下から今まで一言も発しなかったミラが声を出した。
「ああ、ミラだね。この子はミラだよ」
看守長がよく出来たと言うようにミラの名前を言って頭を撫でると
「ミラちゃんか…可愛い名前だね。じゃあまたね」
ヒラヒラと手を振られ…ミラは看守長の足に少し隠れながらそっと手を振り返した。
「あの仕草…」
看守達は何かを飲み込むように堪えて部屋を出て行った。
ミラは看守長と二人っきりになると…
「じゃあミラちゃんだったね。ちょっとお話があるから来てくれるかな?」
看守長は笑って自分の部屋の扉を開いた。
ミラは一瞬迷う…このまま逃げれば…
チラッと後ろを見ると誰も居ない、走れば…
「ああ、逃げてもいいけどいい考えとは言えないよ。それに考えて見てよ私は看守達に嘘をついてまで君との関係を作ったんだよ。どう考えても話を合わせておくのがお互いの為じゃないかな?」
ケイジ看守長はミラに笑いかけた。
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