第55話メイン料理

「で?その美味いスープはどう作るんだ?」


「えっと…多分野菜をそのまま入れてドロドロに溶けるまで煮詰めればいいんだと思う」


ミラは寸胴に水を入れてその中にドボンッと野菜を丸のまま入れていく


「これで強火で煮込んでアクを取ればいいんだと思うんだけど…」


「わかった、じゃあこれは俺が見ておくよ。後は何を作るんだ?」


「パンにスープに…後はメインだよね…何がいいかな…」


「この前のコロッケでいいんじゃないか?」


「でもあれは油を沢山使うからなぁ…今はハーパーもノアちゃんもいないし…」


ミラが寂しそうに声を落とす…


「そ、そうだな!じゃあ違うものにしよう!そうだなぁ…あいつらは腹にたまるものが好きだぞ」


「腹にたまる…肉とかは使わないよね?」


「そうだなぁ…肉は滅多に入ってこないな」


「でも大豆があったからそれで肉の変わりになるかもしれないな…」


「大豆で?」


「うん」


「よし、じゃあ大豆を持ってくるぞ!」


ビオスは急いで食料庫に走った!


持ってきた大豆を水に付けると…


「これで一日水に吸わせて戻してた大豆を蒸すの」


「一日!じゃあ今日はここまでだな」


「そうだね、また明日来るね!」


ミラが片付けを手伝っていると


「あれ?このスープなんか減ってないか?」


ビオスさんが試作のコーンスープの中身を確認すると


「あっそれビオスさんが野菜取りに行ってる時に囚人の人が食べに来たんだよ。それしか無かったから少しあげたの」


ミラがそう答えると、ビオスは首を傾げる…


この時間帯にくる囚人?休みの奴かな…


「なんとも無かったか?」


ビオスさんが心配すると


「うん、優しそうな人だったよ」


ミラがニコニコ笑っていると


「でもなぁ、どんな奴かも分からないのに出たら駄目だぞ…まぁ1人にした俺が一番悪いが…」


ビオスさんが反省すると


「でもなんとも無かったよ?それにちゃんと最初は隠れてたの…チラッとみたら囚人の服だっから大丈夫かなって…」


「まぁ…囚人達はほとんどミラの事を知ってるしな…次にそいつをみたら一応教えてくれ、注意しておくからな」


ミラはわかったと頷くが…その日の食堂にその人は現れなかった。




次の日になりまた食堂に連れていってもらうと…そこには大量の食材が積まれていた…


ミラは覗き込んでビオスさんに尋ねる。


「これどうしたの?」


「あっ…ミラ…いやそれが今朝早く看守達が持ってきたんだ…なんか看守長が持っていけって言ったそうだぞ…」


「看守長?」


「ああ、それで看守の分も作って欲しいって…頭下げてったぞ」


「そうなんだ?」


ミラがふーんと気にした様子もなく答えると


「ばっ!看守が囚人の俺達に頭下げたんだぞ!」


ビオスさんが大きな声を出すと


ビクッと!


ミラがびっくりして体をすぼめる…


「す、すまん…つい興奮して…」


ビオスさんが他の囚人達に睨まれていると


「ミラちゃんの料理が看守達を動かしたんだな」


「あっ!じゃあハーパーさん帰ってくる?」


ミラが期待を込めてみんなを見ると


「それは…ハーパーの反省次第かな?」


あいつが謝るか?と囚人達は苦笑した。

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