第28話ジョンとミラ

ローガンはミラの他人行儀な礼にショックを受ける…


決して顔に出さなかったが、心が締め付けられるようだった。


「ミラ…」


思わず名を呼ぶと首を傾げてこちらを見上げている。


その顔は可愛いミラなのに知らない子のような気がした…


ローガンはミラを隠しながら地下へと向かう…前もって買収しておいた看守に目配せをして独房に向かった。


光の届かない真っ暗な中を足元だけ照らす灯りを頼りに進んでいく…一番奥の独房に声をかける。


「ジョン…」


部屋で音がすると…


「その声はローガンか?」


独房の扉の隙間からジョンが顔を覗かせた。


髪は伸びきり、無精髭が生えミラに会う前のみすぼらしい姿にローガンはため息をつくと


「何をやってるんですかあなたは…」


心底呆れる。


「すまん…」


ジョンがうなだれると…


「ジョンさん?」


ミラがたまらずカートの隙間から顔を出した…


「ミラ!」


ジョンは大声を出すと独房に声が響く!


「しっ!静かに!」


ローガンが声を抑えるように注意すると


「わ、悪い!本当にミラか?よかった…目が覚めたんだな…」


扉の隙間から必死に手を伸ばして来る…ミラはその手を握りしめた。


「ジョンさん…ジョンさん…ジョンさぁ~ん!」


ミラはジョンの温もりにその手を抱きしめて涙した…


ひとしきり泣いてミラが落ち着くと、ローガンが…


「私はひとまず帰ります…一時間ほどで迎えに来ますからそれまでにお二人で少し話をしていて下さい」


「ローガンさん…」


ミラはローガンの服を掴む…やっぱりこの人は優しくて自分に甘いローガンさんだった。


「ありがとう」


今できる精一杯の笑顔を見せると…ローガンは微笑んで頭を撫でてくれた。


ローガンがいなくなるとミラはジョンが幽閉されている扉の前に座る。


ローガンさんが置いていってくれた、一時間ほどで消えるローソクの灯りで二人は向かい合った。


「よかった…少し痩せたな」


ジョンはミラの頬を触ろうとすると…自分の手が汚れていることに気が付き触るのを躊躇う。


ミラは躊躇ったその手にスリっと自分の頬を近づけた。


「ミラ…どうした?元気ないな、まぁ倒れていたからしょうがないが…」


ジョンがあまり笑わないミラを心配そうに見つめる。


「もしかして俺がこんな所にいるからか?」


すまなそうに見ると


「違う…違わないけど…ジョンさん早く出てきて…」


ミラがお願いすると


「わかった!あと少しで解けるからな!そしたらもう二度とこんな所にははいらんと誓うぞ」


ミラはジョンの言葉にクスリと笑うと…また顔を曇らせた。


「それで…何隠してるんだ?」


ミラはバッと顔をあげると話してみろとばかりにジョンさんが笑っていた…

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