私たちは希望を語った。
柳木 椿
第1話
私は水曜日、人の自殺未遂をみた。
屋上で本を読んでいた。そこに彼はやってきた。私と目が合ったが無視してそのままへりえと歩いていく。
「ねぇ!死ぬの?」
「うん。」あまりにも自然な流れだった。当たり前の回答をされた気がした。
なんの躊躇いもないその返事。止めることは絶対に不可能だろうなと感じていた。
だが、人間は他人の自殺するときをみると、思ってなくてもとめるのだろう。
「やめてよ。」
「なんで?」
そりゃそうだ。
私は彼に生きる理由を与えなければいけなくなった。
「ここで本が読めなくなる。」
精一杯の理由。
歩く方向を私の方に変えた。「この前来た時、人はいなかったはずなんだけど。」ぼそっと言が普通に聞こえた。
「ここで本読むの楽しい?」
私はその質問を無視した。答える義理なんてない。なにより、楽しくなんてないから。
「死ぬなら、別のとこにして。屋上に入れなくなる。」
「ここは元々入れない、」
「うるさい。とにかく、ここでは死なないで」
不服そうな顔をした。「わかった。」
承諾してくれたから安心したのはつかのまだった。
「ねぇねぇ、1ヶ月で僕が自殺したら君の負け。僕を止められたら君の勝ちっていうゲームをしよう!」
「は?なんで?」
「だって、そっちの方が面白いから!」
、、、呆れてものも言えなかった。
「見ず知らずの人を止められるほどの人じゃないんだけど?私。」
「うん。そうだろうね。でも、止められたからには最後まで止めたくない?」
いや?べつに?と思ったが面白そうに感じてまったからには
「やるよ。3ヶ月のゲーム。でも、私が止めるのはここで死ぬことだけ。ほんとに死にたきゃ他でやって。」
どうしてもこの場所を死守したかった理由がある訳じゃないけど、わたしも意地になっていた。
「よしっ。じゃあ、また来週。」
そう言って去っていった。
私と如月との出会いは最高とは程遠い出会い方をした。
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