第5話 新たな住居

「番地って、なんですか?」

受け取った契約書には〇番地と、記入する欄があった。

「ここ、4つの番地に分かれているのよ。ちなみにこの喫茶店があるのは一番地よ。1−4番地って呼んでるわ」

「へぇ…」

話によると、それぞれの番地には1から10までの番号のついた建物があるらしい。


一番地 『カフヱ・ヱリス』 

二番地 『大日本帝国青少年学校』

三番地 『目隠神社』

四番地 『大日本帝国図書館』


そして真ん中には広場がある、というのがこのむらの造りならしい。


「なるほど」

「家なら選びたい放題よ、好きなところを選びなさいな」

「えっとじゃぁ…」

僕は万年筆を手に取り、契約書に自分のこれからのライフを満喫するのであろう家を記入した。


『一番地 六号室』


「あら、貴方ここの近くにしたのね」

「まぁ、唯一話せる人ですし…」

そもそも他に人がいるのかすら危ういし。

もう一枚の契約書には名前を書く欄しかない。他に説明がないのだ。

「随分とあっさりとしているんですね」

「見かけ騙しの村長ですもの。このぐらいで十分なのだわ」

はぁ……、そんな雑くていいのか…。


「ふぅん、如月 柊っていうのね」

「あ、はい」

するとすっと女の子の細く白い手が差し出された。

「私は椿 杏。これからよろしくなのだわ。へっぽこ村長さん」

相変わらずきつい…。

柊はその差し出された手を恐る恐るといった様子できゅっと握り返した。

「よろしくおねがいします!」



【椿 杏】

『カフヱ・ヱリス』で働いてる女の子。 

齢18。少しあたりはきついが、そのぶん色々としっかりしている。

一番地の四号室にある喫茶店の二階に住んでいる。



自分の家となる場所に向かおうとしたところ、呼び止められる。

「そうそう、その敬語、やめてくださる?

 気持ち悪いわ」

「えぇっ…すみません…、あっ」

「はぁ…」









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