第4話 過疎化

「第一!こんな見ず知らずの変な旅人を村長なんかにしていいんですか!?」

こんないきなりふらっと現れて金が無いと騒ぐような男をだ。村長なんかにひたところで、きっと3日でこの村は廃墟と化すだろう。 

「別に構いやしないわ。今この村、村長がいなくて困ってるんですもの」

「ならなおさらもっと適任の人を…!」

女の子はその猫目をこちらに向けて、心底うざそうにため息をつく。

怖い。

「あなた本当に日本人?海の向こう側の人じゃなくて?それかよっぽどの世間知らずの阿呆なのね」

「ヒッ…」

「あなた遠いところから来たって言ってたけど、ここに来るまでに一度都市の方にも寄ったでしょう。文明開化とかで、新しいもので溢れてたでしょう?」

「ぅえっ…!あ…はい」

自分からしてみれば新しいというよりも古いに値するのだが。

「いい?この村にはね、村長がいないの。まとめ役がいないと人は皆都市の方に行くのよ。そっちのほうが暮らしやすいから」

「えっと…つまり?」

「貴方って本当に察しの悪いお方ね!!」

怖い怖い、もうこの子怖い。

何言っても駄目なような気がする。

柊はひぇひぇ言いながら縮こまっていたらその顔を覗き込むように女の子がしゃがむ。

ぱちりと目が合う。

「過疎化よ。人がいないの、この村には」

「へ…」

「早いとこ立て直さないと、色々とまずいわ」

ここに来てからの違和感。家などはたくさんあるのに人の気配が全くしないというのは、そういうことか。きっと少し前までは人で賑わっていたのだろう。

「だから…僕がまとめ役に?」

「見た感じ、あなた若いし。旅人さんでこれから先の行く宛とかなさそうだったから」

「そんな理由でっ…」

「困ってる人がいるのに助けないのね。

 残念な人」

哀れみの目が痛い。なんで僕が哀れまれてるんだ。

だがこれはいいチャンスかもしれない、きっと。

多分この機会を逃せば、自分はこれから先野垂れ死ぬのであろう。

「残念な人になりたくないのでやります…」

「理由が既に残念ね」

でもまぁ別にいいわ、と、その子はカツカツと音を立てながら奥の方に行ってしまった。

少し経つとニ枚の紙と万年筆を持ってくる。

「契約書よ」


『住居届』『村長になるに対して』





















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