モンスターハンター・ハンター(仮)【不定期連載】

山原 もずく

第1話 家族の風景(仮)

この世界は、人間と魔物という2種類の種族で別けられている。


僕の名前はトキ『亜人』の子供だ。『亜人』と言っても現行の政府が『人間』と認めないだけで外見は殆んど同じだ。


せいぜい肌や髪や目の色が違っていたりするだけ、、、

まぁ、たまに尻尾や牙が生えてたりする子もいるけど、、、。


僕たち亜人はこの世界では『魔物』と同じ扱いだ、、、

基本的に人権はない。


人間にペットや奴隷として飼われていたら『所有物』としてむやみに命を奪われる心配はないそうだけど、、、。

大抵は人間に見つからないように山奥に小さな村々を作りひっそりと暮らしている。


 そもそも僕たちがこんな扱いを受けるのは、僕たちの国の王様が『亜人』だったからだと聞いたことがある。


その王様が生きてた頃は人間や亜人の国が他にも沢山あって、それぞれの国は平和な関係だったらしい。人間と亜人が一緒に暮らしている国もあったそうだ。

 

ところがある日、『勇者』を名乗る人間の一団が僕たちの王様の城に攻め込んで王様の命を奪った。そして、そこで手に入れた『武器や秘法』を使って他の国にも攻め込み自分たちの領土にしてしまった。


今まさに世界を支配しているのは、その『勇者』を王とした『ルイス帝国』なのだ。そして『帝国』は僕たち亜人から人権を奪った。


いつか、とある村に住む亜人に聞いたことがある。人間たちが亜人を支配したがるのは亜人が『特別な力』を持っているからだと。


確かに僕たち亜人は、生まれつき人間より魔力量も多いし、身体能力も高い。

魔物、いわゆるモンスターとも「念話」で意思の疎通ができたりもする。


でも人間も努力すれば同じことができる様になるのに、、、


「自分達より優れているから支配しようなんて、勇者じゃなくて臆病者じゃん」


ポツリと独り言を言いながら空を見上げると、もう日が暮れかけていた。


今日は宴の為の酒を近くの村に買出しに行っていたのだが、つい話し込んでしまい遅くなってしまった。


近くの村と言っても片道3時間くらいはかかる。

仲間たちのもとへと戻る頃にはすっかり日も暮れていた。


『トキよ遅かったね、、、また話込んでいたのかい?心配したよ』


「ごめん、長老。人と口で話すのが楽しくて、、、つい」


『ふふふ、私はいいさ、、それより皆が待ちきれないようで騒がしくてね』


(サケ! サケ! トキ! サケ!)


確かに30頭以上の『デスウルフ』の群れから【一斉おねだり念話送信】でせがまれると頭がおかしくなりそうだ。。。


(サケ!!サケ!!トキ!!サケ!!ハヨ!!ボケ!!)


「はいはい、わかりました。沢山買ってきましたよ、、って。

 誰!どさくさに紛れて文句言ったのーー!!」


みんなが一斉に笑う、笑うときは声に出す、

まるでハイエナの鳴き声の様だが、僕は皆のこの声がすごく好きだ。


【デスウルフ】死肉を漁るもの


物騒な名前がついているけど実際は

『食べるためにでさえ生き物を殺さない』

そんな心優しい種族、それが僕の家族だ。


もちろん僕は『亜人』なので血のつながりは無い、人間に襲われた『亜人の村』の生き残りなのだ。 


その日、長老達は殺された村人の死肉を漁りに来ていた。

そこでたまたま生き残った赤ん坊の僕を見つけ、育ててくれたというわけだ。


もちろん、死んだ村人たちは残さず骨までたいらげた、、、らしい。


いっけん残酷に思えるが、そこは種族による『価値観』の違い。

僕も近くの村に通って色々な話を聞くようになるまでは、特になんとも思っていなかった。


別にいまさら嫌悪感を抱くことも無いけど...。

今日の宴のメインディッシュ...。

このお肉は先週亡くなった仲間の肉

(イチボ爺さん、享年60歳)なんだよなぁ...。


そう、肉を食すことで死者を弔う。

それがデスウルフ族の『価値観』なのである。


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「ねえ、長老、僕のお父さんとお母さんはやっぱり殺されたのかな」


酔っぱらったお調子者の「リブ」が自分のシッポを追っかけ回しながらくるくると回りだした頃。


いつもの特等席、フカフカで暖かい長老の懐にもたれ掛かりながら、何度もしてきた質問をする。答えはわかっていても、お酒を飲んだらやっぱり少し恋しくなって、つい繰り返す。


『どうだかね、、、

お前さんの村に子供の亡骸は無かった。。。

おそらく奴隷用の亜人を捕まえる集団にやられたんだろう。子供や若者は奴隷として売れるからね、、、』


「だったらさ、お父さんとお母さんがすごい若かったら、、、奴隷としてどこかで生きているかな?!」


『どのみち10年以上前の話さ、奴隷として飼われてたとしてもそんなに長くは生きれない。危険すぎるし“探そう”などという馬鹿なことは考えないことだよ』


本気で探し行こうとは思ったこともないし、そんなこと言ったこともないけど。

今回も、いつもの様に釘を刺された。

それほど【人間には注意しろ】という事なのだろう。


「人間には会ったことある?」


これも何度もしてきた質問で、聞くたびにはぐらかされているが、

今回は寝たふり...いや、吐息からして本当に寝ているようだ。

 

トキはまだ人間に会ったことがない。

人間についてや勇者の話だって、近くの亜人の村で教えてもらっただけだ。

たまに遠くを歩く旅人は見たことがあるけど。。。


『人間に近づくのはおろか、絶対見られてはいけない』

というのが長老からの教えだった。


お互いの体温が溶け合って、呼吸と共に優しく上下する極上のゆりかご。


「買出し」の疲れもあって、トキはそのまま心地よい眠りについた。





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