オカケン

@anisakisu

第1話

とある学校のとある部室、プレートにオカルト研究部と書かれた部屋で部長の背後に立った先輩が唐突に言い放った。

「これよりオカケン会議を開始する」

なんの脈絡もなく会議を始めた先輩、もとい副部長は目の前の部長に視線を向けた。

「私達オカケンは今まで数々の神秘、超常現象、心霊スポットを調査してきました」

そう言って部長は『アカシックレコード(仮)』っと書かれたファイルを机に置いた。

丸文字の可愛らしい字で書かれた痛々しい名前のファイは以前見させてもらったが、調査地での写真に一言感想の書かれたただのアルバムだ、尚名前はまだ考え中とのこと。

「今まではこの調査記録『アカコ』をもとに文化祭などで細々と活動実績を稼いできましたが」

そこ略すなら調査記録で良くない?

「ぶっちゃけネタがつきました」

てへっと可愛らしく頭に手を当て首を傾げる、そんなあざといポーズも先輩とは思えない子供っぽい容姿にはすごく似合っている、本人もそれを分かっていてやっているからタチが悪い。

「このままでは委員長のメガネ君にぐちぐちと小言を言われてしまいます。なのでこれからしばらくの土日は『アカコ』のストックを貯めるために小旅行を企画しました、ちなみにオカケン全員参加です、拒否権は時と場合と私の独断で認めます」

最後は独断で判断してる時点で実質拒否権がないのでは?というか小旅行って言ってる時点で遊ぶつもりでしかないなこの部長。

そのセルフを聞いて同級生が手を挙げた。

「全員参加ってことはゴーストも参加ってことっすか?」

ゴーストとはこの部での幽霊部員の名称で部長と副部長がしつこく訂正してきたので部員はゴーストと言うようになった、そのこだわりは一体どこからきているのか、オカケンだからか?

「ゴーストの皆は非参加だ、今回の小旅行では異能の実験も兼ねているからな」

副部長の言ったように我々オカケンはゆうr…

ゴーストを除いた部員は異能を持っている、基本的に異能の発動条件は目視だと副部長が言っいた、本人曰く「今まで見てきた能力者は直接目で見える範囲でしか能力を使えないことが多く、カメラ越し画面越しでの発動はできない、例外は今のとこメガネくらいで双眼鏡のように倍率が上がると発動しなくなる」とのこと。

副部長は一体どこでそれだけの希少な能力者と接触したのか定かではないがオカケンの異能も目視範囲でしか発動しないことからそう間違ってはいないだろう、ちなみに僕の異能は『発火』どこからともなく火の粉を出すだけの能力でせいぜい衣服に焦げ跡がつくくらい、火の玉を飛ばしたり火を纏ったりなんかはできない、それどころか木屑や油なんかの可燃性の強い物でないと火がつかないほど火力がない。

「調査記録に俺らの異能を載せるってことっすか?前は異能の口外はしないようにって部長言ってなかったか?後証拠になる物も残すなって」

同級生の疑問に部長が首を振って答えた。

「いや『アカコ』には異能のことは載せないよ、ただパワースポットや心霊スポットで異能の実験をするだけ」

「何でわざわざ現地で実験なんかするんですか?やろうと思えば部室や部員の家に集まればできるでしょ?」

僕が疑問を口にすると部室の扉が開かれて女生徒が入ってきた、かと思うと唐突にハイテンションで語り出した。

「それはだね後輩、今回行う実験は異能を使った応用、活用法を考えるために道具や薬品類も扱うからさ!それに現場に異能の痕跡を残してもそれっぽいことでっち上げればネタには困らないからね!」

部室に入ってきた女生徒は副部長と同級生の妹で、物心つく前に両親が再婚したらしく血の繋がりはないらしい、後この先輩さらっとせこいこと言ったぞ、そしていつから君は扉の前に待機していたんだ。

「ということで今日の議題はこれです」

言うや否やホワイトボードに『異能の活用の幅を広げよう』と大きく丸文字で書かれ横にデフォルメされた猫の絵が描かれた、猫可愛い。

「まずは皆の異能の確認だ、俺は特に変化はない」

そう言って副部長はハンカチを取り出すとその端を持ち、揺らすようにして机を叩いた、するとコンとノックをした時のような乾いた音が響く。副部長の異能は『硬化』生き物や植物以外を硬くする能力で本人曰く「その場で固定されている」だそうで硬くすると言うより硬化範囲の物が動かなくなるイメージらしく自分で触れていれば移動させることはできるそうだ。

「私はなんと!異能の効果対象が2つになりました、ドヤ‼︎」

副部長の妹は渾身のドヤ顔を決めながら机に2つ置いた人型の形代を操って見せた。妹の異能は『憑依』物に意識を移すことができる、尚移した対象によって性能が変わるらしく「翼がつけば空だって飛べるよ!」とのこと。

「すごいね妹ちゃん、私も副部長と同じく変化なしだね」

言い終わると部長は鞄から水筒を取り、持ってきたコップに注ぐと、コップを満たしていたお茶が下はただの水になり上は先ほどよりも濃い茶色えと変わった。部長の異能は『分離』気体、液体を先程のように分けることができ能力が続く限り混ざることはない、また固形物も分離できるらしいが「硬い物になるとあらかじめ線を引いておかないと分離できないの、ちなみに線を引いていれば生き物も分離できちゃうよ」っと言っていたが、できれば後半は冗談であって欲しい。

「次は俺っすかね、と言っても俺も変化無しっす」

そう言って同級生は部長の前にあるコップに視線を向けた、するとコップを覆うようにして大きめの洋梨が現れた。同級生の異能は『幻影』掌サイズの対象にイメージした物を映すことができ「イメージが曖昧だと発動しないんっすよね、これ」とのこと、ちなみ彼は洋梨が好物であり映し出された洋梨は、表面の水滴まで再現した自信作で部室の明かりも考慮して影までしっかり再現されている、洋梨への執念でここまでクオリティを上げているが洋梨以外を映すと影が無かったり、立体感が無かったりと一目で『幻影』だとわかるできになってしまう、洋梨限定でいえばこの部の中で1番異能の精度が高い。

「僕は異能の使用回数が増えました、まぁ火力はいつも通りですけど」

そう言って僕もみんなに続いて異能を使った。僕の異能『発火』はご覧の通りこの部で1番ガッカリ性能で火力も無い、又数回使っただけですぐ息切れしてしまうくらい燃費が悪い、副部長の提案でスタミナをつけるために毎日走り込みを行なっているおかげで日々使用回数も増えていってるが、この火力をどうにかしない限り使い道がない、使う機会もないんだけど。

「今回は妹ちゃんと後輩君の2人も変化が出ましたか、特に後輩君は前回に引き続き今回も、私も負けていられませんね」

性能は何一つ勝っていないのでそんな張り合う必要も無いと思います。

「威力が低くても使い方次第でいくらでも殺りようはある、とりあえず自作爆弾の起爆装置代わりにはなるだろう」

この副部長やたらと殺意高いな、てか何で爆弾とか作れちゃうの?僕の目の前に置くのやめてもらえますか?僕の思いも虚しく机の上に1缶置かれた。

「安心しろそれは煙幕だ」

そう言う問題ではない、そもそも学園に煙幕を持ってくるな、てか持ち歩くな。

「では近況報告も終わったことで各自道具を使った異能の活用法を考えようか」

こうして本日のオカケン会議がようやく本題に入った。あの部長?僕の名前の横に爆弾って書くのやめてもらえます?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る