バズりたくない女性ゲーマーの非日常【改訂版】

アーカーシャチャンネル

ゲームに触れたきっかけ

 目の前の光景、それはリアルな都市と言っても過言ではないクオリティを持っていた。


 まるでレースゲームを連想しそうなコース、それを駆け抜けるのはパワードスーツを装着したランナーである。


 プレイヤーはランナーとなって走り、障害物などを突破しつつゴールを目指す……。そして、最終的にはタイムトライアルで勝利するのだ。


 それが『パルクール・ブレイブ』と呼ばれるゲーム。今、SNS上で話題となっている作品だった。


 ランナーは女性キャラしかいないのだが、一種の萌えを主体にした物でもなければ、性描写を強くしたようなゲームという訳でもない。


 作りこみがすごいだけのパルクール……そう簡単に説明してしまっては、それまでだが。


 ランニングアクションも出来は良いらしく、そこまで炎上するようなゲームではないと誰もが思う。しかし、ある一点だけは今の状況下では擁護できないレベルで炎上しているのだ。



 今は様々な事情もあって、ゲームセンターに出向くことさえも難しくなっている。予算的な事情ではない。


 SNS上で炎上を行う勢力がいて、彼らが「外出自粛」と叫び、更に言えば「ステイホーム」を強く推し進めているのだ。


 そのおかげで、ネット通販業界が景気の良いという話も聞く。しかし、こうしたSNS炎上勢力のやり方は褒められたものではない。


 彼らのやっていることは、SNSを戦場とした世界大戦といっても過言ではないだろう。それをマスコミに言ったとしても、信用はされないが。


 実際、この作品のストーリーがそうなっているのだ。ランナーの最終目的は「外出自粛」などを叫ぶSNS炎上勢力の野望を打ち砕くこと。


 暴力描写のあるようなゲームでそうしたストーリーを持たせたとしても、殺人事件に発展しては御終いだ。


 ゲーム業界にも『異世界転移』や『異世界転生』といったWEB小説のジャンルが独占し、現代物は規制をされてしまうだろう。


 だからこそ、この作品は『パルクール』アクションで『SNS炎上』勢力の野望を打ち砕くというストーリーになったのかもしれない。


 

 フード付きのパーカーを着込み、フィギュアやゲーム機が整理されているような部屋でまとめサイトを見ている女性がいる。ブルーライト対策の眼鏡をかけ、若干ぽっちゃり気味だが……ダイエットをする気はないようだ。


「パルクールアクションは、完成度が高いみたいだけど……操作がマウスというのはどうなのだろう?」


 マウスを動かしてプレイするようなゲームはいくつかやった事のある彼女だが、アクションゲームをマウスというのは事例が少ない。


 これはいわゆるレースにも近い為、どうしてもゲーミングマウスでも用意しないと難しい気配がする。


 更に言えば、これはゲーム機のゲームではない。ノートパソコンのようなスペックが値段によって制限されるような機種でも動く。その為、操作はマウスで行うというものかもしれないが、それでも慣れないと厳しいものはあるだろう。


(それでもやってみる価値はあるのかな。SNS上でバズりたいわけじゃないけど)


 あるゲームが流行ると、そのゲームばかりピックアップされるのは業界では宿命なのだろう。


 単純にバズる為にだけプレイするプレイヤーが集まった結果、マナーの悪いプレイヤーがピックアップされ、炎上するケースだってある。


 それを踏まえて、プロゲーマー候補生でもある彼女は、躊躇しているのだろう。単純にバズり目的と思われて、安易に炎上してしまうのでは、と。



 その彼女が驚くのは、ゲームのクオリティだけではない。それ以外の個所でも普通のゲームでは考えられない仕様が多かった。


 プレイヤーのパワードスーツはカスタマイズで強化できるが、それらはアイテム課金のようなものを導入していない。


 課金要素は、あくまでもオプションパーツの部類だけである。サービス運営は大丈夫なのか……と心配になるのも無理はないだろう。


 実際にはゲームのクオリティが高い事もあり、オプションパーツだけの課金要素でも課金をするプレイヤーは多いのだ。


(とりあえず、エントリーするだけなら無料だし、やってみるかな)


 エントリーは無料なので、彼女は早速ゲームのエントリー作業を始めることにする。


 ダウンロード系のゲームに該当するがデータは主に処理速度の緩和がメインで、ノートパソコンのような限られた容量しかスペースがなくても問題はなかった。外付けのSSDを接続はしていたのだが、そこは安心しているようでもある。

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