名もなき女神の聖剣①


(第三者視点)


 悠人が持つ聖剣は、召喚時に神に貸与されたものである。


 故に聖剣は使用しない時は、悠人自身の魂の中にあり、態々持ち歩く必要もない。


 そして聖剣の所持者は、聖剣が魂の中には入ってくると自然とそのがわかる。

 しかし悠人は自身の持つ聖剣のを知らない。



 当然である、その剣にはも、人々が語り継ぐべき逸話もないのだから。



 ――――――――――


 ある森の中にある小さな祠、そこには名前のない女神が奉られていた。


 祠は古びてはいるものの、綺麗に手入れされており、まだその女神にはちゃんと信仰している者がいることがわかる。


 祠の近くには小さな村があり、そこにはある青年が住んでいた。青年の両親はまだ青年が10歳の時に亡くなってしまっていたが、優しい村人達に助けられ青年は優しく真面目な性格に育つ。


 青年にはある日課としていることがあった。森の中にある小さな祠の手入れをし、お供え物をしてその日あったことを報告し、最後にいつも見守ってくれる女神様に感謝を伝える。


 青年はそれを毎日、雨の日も嵐の日も続けた。それは青年の恩返しだった。


 青年がまだ幼い頃に森の中に迷いこみ、泣いていたところを、とても綺麗で優しそうな女の人に助けてもらったのだ。


 心配する両親の元に息子が森から戻ってきたのはかなり遅い時間だった。灯りも持たずに一体どうやって帰ってきたのかと聞くと、


 見たこともない綺麗な女の人が、村のすぐ側まで手を引いてくれて、一緒に帰ってきたのだという。


 村では見ない女の人、それを聞いた両親は、翌日に息子が帰ってきた方向へ向かってみると、ボロボロになった祠を見つけた。


 両親は息子を助けてくれたのはこの祠に奉られている神様なんじゃないかと思い、ボロボロだった祠を綺麗にして、息子には神様にちゃんと感謝をするようにと言い聞かせた。


 それからその青年は毎日毎日 祠へ向かい、祠の手入れとお供え物をして、神様にその日あったことの報告をするようになった。


 そして神様に感謝をする。今この日々があるのは、あの日、女神様に助けてもらったからです…と。



 ―――――――――


 その女神には名前もなく大した力もない、昔は近くの村の人達がよく祠の手入れやお祈りをしに来てくれたが、やがてゆっくりと忘れられ、誰も訪れなくなった。


 寂しかったが神格も低くく、大した恩恵もないので仕方のないことだと思っていた。


 ある日女神は森で迷子になった子供を見つけた、放っておくわけにもいかず子供を近くの村へ送っていった。


 久しぶりに人と交わした言葉は、女神にはとても暖かなものだった…。



 その次の日


 昨日助けた少年とその両親が祠に来て、掃除とお祈りをしていってくれた。


 さらにその次の日からは少年が毎日毎日…祠の手入れとお供え物、お祈りまでしてくれるようになった。しかもそれが終わると、色々とその日の出来事を報告までしてくれる。


 女神自身は姿を表さすことは無かったが、長いこと孤独だった女神にはそれが堪らなく嬉しかった。


 少年は前日の夕飯や親の手伝いでしている畑作業のこと、村のガキ大将と喧嘩したとか、隣に住む幼馴染みの女の子のことが好きだとか…


 いつしか女神は少年が来てくれることがとても楽しみになっていた。



 ある日少年が泣きながら報告してきた、少年の両親が死んでしまったと……そんな時でも祠に来てくれる少年は、女神にとってとても大切な存在になっていた。


 月日がながれ少年が青年になり


 ある日青年が恥ずかしそうに報告してきた、ずっと一緒に育ってきた隣に住む幼馴染みと、結婚をすることを…


 青年の話しを聞いてはヤキモキしていた女神は(やっとか)と思った。


 今度、その幼馴染みをこの祠に連れてくると言って青年は帰っていった。


(おめでとう)


 青年に聞こえることはないだろうが、女神はそれでも祝福せずにはいられなかった。



 しかし


 その翌日、村から火の手が上がる。



 ―――――――――


 結婚するんだ…とか言うから…


 すいませんすいません


 本当はこの聖剣の話の後にアップするつもりだった糖分補給用の話を、昨日間違えてアップしてました…



 この世界の神様は神格が低いと人間みたいな性格をしており、神格が高くなるにつれて感情が薄くなっていきます。















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