already

@4G_yeah

第1話

自由がほしい。そう唐突に思った。しかしそれは今までに何も自分で考えたことのなかった身にはあまりに漠然としすぎていて、身体の中心がすこん、と抜かれたような気分になった。それなのに足元はぐらぐらと熱くもえ、今にも走り出したい衝動に駆られた。ひとまず外に出よう。そう思った。今より自由になれるはずだから。そのために然るべき服に着替え、お金を持ち、誰にも気付かれないように外に出た。

空は青く澄み渡り、太陽が眩しかった。でも足りなかった。まだ身体の底の熱は消えてはいなかった。だから己のそのよく回る頭でよく考えた。どこか広い場所に行こう、そうすれば自由が手に入るはずだと。だから公園に行った。公園では縦横無尽に走り回る子供たちがいた。眩しかった。自分がほしい自由を持っていた。近づけば手に入るような気がして近づいてみたが、それは子供たちを怖がらせるだけで、欲しいものが手に入ることは無かった。悲しいと感じた。

やはり、もう少し開けた場所に行くべきだと思ったから、大通りに出てみた。

「え〜!やだこわ〜〜い!!」

「だよね〜〜」

女子高生の甲高い声、大学生の大胆な笑い声、主婦達の偶然の遭遇に驚く声、色々な声に溢れている。名も知らない人とすれ違う度に自分だけが特別なのだという根拠の無い優越感が込み上げ、心躍らせたが、それがとても虚しくも感じた。

それから頭に入っている限りの自由を試してみたが、どうにも納得がいかなかった。日も落ち、人工的な光以外無くなった頃には、街でいちばん高いところにある丘にきていた。そこにあった少し腐って端の欠けたベンチに座り、コンビニで購入したビールを開けるとカシュッっと音を立てた。ちびちびと飲みながら街を眺める。残業に明け暮れたり、家庭で楽しい時間を過ごしたりしている人達の光が煌めき、星のようで、水平線で空と地上が鏡写しのようになっていた。うつくしいな、とそう思った。地上の星達が、結局何にもならない行動から光っていることも、毒しかない飲み物を飲むことも。もしかすると無意味なこと、無駄なことが一番美しくて、自由で、人生の極点なのかもしれない。缶の半分まで飲んだところで、胸が熱くなってきた。あぁ、いまいちばんしあわせかもしれない。不思議と口角が釣り上がり、目を閉じた。ふわふわとしたまま最後の一滴まで飲みきると、もうその頃には身体の隅々が鈍く目を開けることは出来なくなっていた。至高の自由が手に入ったような気がして、そのまま初めての微睡みに身を任せた。

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