第二部 ヘルシラント族長、奮闘編
第11話 物語の舞台など
【物語の舞台】
ヘルシラントはファレス大陸の南部、「火の国」地方の概ね西南端にある。
大陸は、かつては人類の統一政権「ファレス王朝」によって支配されていたが、王朝は衰退著しく、現代では名目上の権威は残されているものの、王都周辺のみを支配する一地方政権に転落している。
各諸侯が(名目上はファレス王朝に服属しながら)事実上独立し、各地に割拠して勢力争いを繰り広げる時代になって数百年が経過しているが、未だ明確な覇者は現れていない。
諸勢力が争う混乱の時代が続いた結果、辺境の地などは諸侯の影響力が衰退し、どの勢力の力も及ばない「無主の地」となっており、「火の国」もその一つである。
「火の国」は「灰の街」など人類の自治都市などが点在しているものの、それ以外の地域は無政府状態であり、ゴブリンの諸部族が点在している状況である。
【ゴブリンについて】
ゴブリンは魔物の中でも生息数の多い種族であり、人間よりは少し背が低く、緑の肌に、長い耳を持っている。
ファレス大陸でも各地に部族が居住しているが、大陸南部の「火の国」および東部の「豊かなる国」に多数の部族が存在する。
基本的には山地の洞窟内、集落などで生活しており、野生動物の狩猟や、周辺の街道を通行する隊商を襲ったりして生活している。中には農業や交易らしき事をしている部族も存在する。
ただ、魔物の中では比較的弱く、討伐される事も多い。また、部族間や部族内で争う事も多く、繁殖力は比較的高いものの、ゴブリン同士での争い等で無駄な消耗を繰り返しているため、勢力拡大には結び付かない状況が続いている。
意外にも温泉が好き、という特徴があり、ゴブリン集落、ゴブリン洞の近くには温泉がある事が多い。
武器は比較的原始的な棒や槍などが多いが、交易で入手した武器を使う者もいる。
また、弓を得意とする部族も存在している。イプ=スキ族やユフィン族は集落周辺に生息する馬を乗りこなしており、騎射を得意としている事で知られている。
ごく一部のゴブリンは魔法を使うことができ、指導者層として君臨している。
【「火の国」のゴブリン勢力】
ゴブリン部族は、かつては各地方を統一した「ハーン」によって統治されていた期間も存在したが、現代ではこうした大勢力は無く、各部族単位に別れて勢力争いを繰り返している。
「火の国」のゴブリン部族では、北部方面に居住する「マイクチェク族」が最も勢力が強く、中央部に割拠する「イプ=スキ族」がそれに次ぐ。
本物語の主役、リリが暮らすヘルシラント族は、西南部の海岸近くにある「ヘルシラント山」およびその周辺を居住地とする部族であるが、比較的勢力の小さな部族である。
北方に勢力圏を持つ「マイクチェク族」の現族長はサウ=コタ王で、副王ワントと共に勢力拡大を図り、南方のイプ=スキ族に侵攻を繰り返している。精強な歩兵中心の部族である。
中央部に割拠する「イプ=スキ族」は弓騎兵を有しており、機動力を生かした騎射戦法でマイクチェク族の侵入を阻止している。歴代「ムーシ家」から族長を輩出しており、現在の族長はスナである。北方のマイクチェク族に備えると同時に、南方方面、ヘルシラントへの勢力拡大を図っている。
最南方に割拠する「ヘルシラント族」は、ヘルシラント山の洞窟が本拠で、周辺の小規模な集落を勢力に含む程度の、「火の国」では最も小さな勢力である。
イプ=スキ族の侵攻をしばしば受けており、本拠の洞窟に籠城する事で陥落は免れているものの、その都度周辺の集落や畑を荒らされる損害を出している。
こうした小競り合いが続く「火の国」における勢力地図だが、百年に一度、ゴブリンの世界に出現する「ゴブリリ」がヘルシラント族に出現した事により、大きく変化していくことになるのであった。
【「ゴブリリ」について】
「ゴブリリ」はゴブリンの世界に約百年に一度出現する、女王になるべく生まれてくる特別な個体である。普通のゴブリンよりも一回り小さく、白い髪に小さめの耳。ゴブリンよりも、人間の少女に近い姿である。
特別な存在である事から、ゴブリン部族の内部においては、独特な名前の発音やアクセントで呼ばれる(本作品においては、「りり」と、ひらがなで表記している)。
ある程度成長した段階で、特殊能力「スキル」に覚醒する。覚醒時期は、概ね10歳の誕生日頃と言われている。
「スキル」の内容は様々であるが、「ゴブリリ」は覚醒した「スキル」能力を活用することで、女王としてゴブリン諸部族を率いて、繁栄に導く宿命を背負っている。
過去の「ゴブリリ」は、その宿命、期待に応えた者もいれば、「外れスキル」を引いて期待外れに終わった者もいる。過去2代の「ゴブリリ」(「外れスキル」の持ち主)を輩出した部族は、既に滅亡している(他部族に併呑された)。
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