私は恋愛小説家
@ayu_maru
1月
出会っちゃった。
恋に落ちた瞬間がわかった。
私の恋は
汗と共に落ちた。
私、石橋あゆみ26歳、職業保育学生と彼との出会いは、太ったと周りに言われ渋々通うことにした駅の近くのトレーニングジム。一度ハマると結構長続きする私は案の定ハマって週5〜6日のペースで通ってる。ちょっとした下心は勿論ある。彼氏も2年いない私は恋だってしたいし、友達だって欲しい。だが、全然ダメ。声かけるなんて無理だし、ジムに行ったら友達作れるとか彼氏できるなんてものは最近よくある漫画やアニメの異世界行ったらなんたらくらい奇跡。毎日毎日筋トレしてランニングを少しするだけ。
2週間も経てば慣れと諦めで、ただトレーニングの鬼と化してきた。今日もトレーニングしてスッキリしながらストレッチの為にスマートフォンを操作し聞いていたORANGE RANGEからaikoに変えた。前屈をして上体を上げると左耳からワイヤレスイヤホンが落ちた。
(あれ?どこいった?)
そばに落ちたはずなのに見当たらない。
「これですか?」
へ?っと顔を上げると全身黒のトレーニングウェアを着た眼鏡の男性が私に落としたワイヤレスイヤホンを差し出した。
「そうです!ありがとうございます!」
「よかった。じゃあ」
「はい。ありがとうございました!」
たった、1分にもみたないやり取り。後姿を見送る私の心は汗と共に恋に落ちた。
それからは、たまにジムで会うようになり軽い会釈からだんだん少しずつ話すようになった。
名前は松下優貴さん、会社員、年齢は34歳。身長は175センチらしい。声が低くて優しい人。
ランニングをメインにしててずっと走ってる。
私はトレーニングを終えいつものようにストレッチをしていたら低く穏やかな声が降り注いだ。
「お疲れ様です。」
顔を上げると彼の顔。
私ね、あなたから声かけられたときすぐ反応できるように音楽切ってたんだよ。ただ耳に付けてるだけだったんだよ。
「お疲れ様です。」ふわりと微笑んでいつものように返す。
「よかったら連絡先交換しませんか?」
キタキタきた!!!待ってましたよ、本当に待ってたその言葉。多分だけど今までで一番素早く反応して「もちろん!」って答えたよ。
それからの毎日のやりとりは楽しかった。初めて彼から電話していいですか?って聞かれた時は意味もなくその電話の時間まで部屋の掃除したし長電話するかもしれないと思ってトイレも事前に済ませた。
LINEの着信音が鳴ったときは、待ってました!感を出さないように3コールで出ようと思っていたが1コールで出た。他愛もない話をたくさんした。楽しかった、幸せだった。恋してる自分がそこにいた。土曜日にドライブに誘われた。電話切ったあと高校生の彼氏できたての女の子のようにベッドの上で足をバタバタさせ喜びを噛み締めた。
(あ〜好き。)何度も思った。土曜日が楽しみでたまらなかった。
土曜日、彼がくる。待ち合わせは私の家の近くのコンビニ。お気に入りの服とヒールで決め、メイクも濃ゆすぎずナチュラル過ぎないくらいで自分史上最高に可愛いと思ってる。待ち合わせ5分前、黒いSUVが止まった。あ、きた。
出てくる彼を見なくてもなんとなくこの車だってわかった。
「お待たせ!乗って。」
「はい!」
車のドアに触れたとき、初めての二人っきりだ〜!って心臓バクバクだったの。
「お願いします。」
一言添えて中に入ると、お洒落なジャズが流れてた。
「どこに行こうか?天気いいから海とかかな?」
「どこでも!」
1月の寒い寒い日に海を選んだとこ。今思えばアホやったなぁって思う。
海までの30分間、ドキドキと幸せでいっぱいだった。
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