脱出物語
月影
第1話 大脱出
朝か夜か分からない時間に、俺達は目を覚ました。俺と、もう一人はケルトという男だった。
俺とケルトは、薄暗い牢獄の様な部屋にいた。ケルトは目を見開いて言う。
「あ、あれ?ここはどこだ?」
「忘れたのか?」
俺は呆れた顔で言う。
「悪井島にいたらとっ捕まったじゃん」
「あ、そうだったね」
ケルトは起き上がり、首を縦に振る。
俺も起き上がって考える。
そう、悪井島。俺達はその島にゾンビがいると聞き、その島に丸一日ぐらいかけてやっとの事で着いた時、何者かに捕まった。そして気が付いたらここにいたって訳だ。何故その島に行ったかというと、ゾンビが出るという噂を確かめたいからだ。そんな子供の様な考えで、いや、子供なんだが、この島に行ったという訳だった。
「あ--------…」
ケルトは考える。
ああ、分かるよその考え。誰でも分かる。
「…」
ケルトは黙りこみ、カッと目を開け、俺に向かって言う。
「ダメじゃん!」
「そうだね!」
俺もようやく慌て出した。一体、ここはどこだ?俺達は、どこにいるんだ?
色々な疑問が、俺の頭を駆け巡る。いや、今は色々と思いついた事を相談してみよう。俺は落ち着き、言う。
「でも俺たちなにもされてないよ」
その言葉にホッとしたのか、ケルトが顔を上げる。
「ほんとだ」
しかし、その言葉しか言えなかったらしい。その気持ちも分かる。
俺は恐怖心を抑えて、ゆっくり深呼吸した。自分を落ち着かせるにはこれしかないだろう。すると、どこかで声が聞こえた。
「それはどうかな?」
俺ははっきりとその声を捕らえた。敵の親玉か?ゾンビの声か?そんな馬鹿げた事をかんがてしまう。頭はあまりまわってないらしい。
俺達が振り返ると、そこには青い髪の少女がいた。とても綺麗だ。
「びっくりしたー」
ケルトが目を開けている。よっぽどびっくりしたのだろう。
女が喋る。
「夜、あなた達は細胞を取られていたよ」
「さ、細胞!?」
俺とケルトは声を揃えて驚く。
女も恐怖心を持っているらしく、深呼吸を繰り返している。
「これ、結構大変な事件だ」
女が顔を俺達に近づける。
「でもね、私達は牢屋の中でしょ」
いつのまにか、女は深呼吸をやめている。
「だから、5人で力を合わせて頑張ろう」
頑張る?ここから脱出するという事か?しかも、一体この女は誰だ?という疑問が増えて、頭の中で混じり合う。そして、一番気になる事がある。
「じゃあ、あと2人は?」
この女は5人で頑張ろうと言った。つまり、俺達以外に誰かいるという訳だ。
俺はベッドの上で立ち上がり、女の後ろを見る。
誰もいない。女の後ろから出てくると思ったのだが、そんな演劇の様な事はない様だ。
女はそんな俺が面白いのか、フフッと笑った。俺は恥ずかしくて、ベッドに座り直した。
「違う牢屋にいるみたい」
女は言った。
前よりも表情が柔らかくなっている。俺のおかげだったのか?だが、思い出してしまうと恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。今は考えるのはやめて、女の話に集中する事にした。
「抜け出さないと、この牢屋から!」
女は真剣な表情で俺達を見る。そうだ。もし、ここが牢屋だとすれば、まずは抜け出さないといけない。
「どうやって抜け出すんだろう」
ケルトは部屋を見回した。
すると女は、壁の真ん中にあるスイッチを見つけた。
「あのスイッチじゃない?レバーみたいなの」
確かに下に下げるレバーの様はスイッチが、女の指さした壁にある。以外とでかかった。ゲームによくある、スイッチを押したらドアが開く、という事があり得る。だが、こんな大きなスイッチが見つけやすい所にあって、それが都合よく脱出する鍵になるのだろうか、と考えてしまう。だが、他に方法はない。この部屋はベッド以外何もないし、どこにも脱出の鍵になる物はない。このスイッチを押すしかなかった。俺はベッドを飛び降りた。
「任せろ!」
俺はジャンプし、足で蹴ってレバーを下に下げる。
すると、ドアとは反対の壁に穴が空いた。
「やったー!」
「これで抜け出せるー」
俺と同時にケルトも笑顔になっていた。ずっと恐怖心を持ったままだったのだ。この事でようやくなくなったらしい。
女に続いて俺達は穴の中に入っていった。
まさかあのスイッチでこの部屋を脱出できるとはな、そう思って俺は穴の中に入ったのだが--。
「だ、脱出だ!」
そんな訳はない。あのスイッチを押してしまったら、この島のゾンビ達にその事がバレる。俺達がこの部屋を出た後、ゾンビがこの部屋に入ってきて、叫ぶ。
こうして、色々と人を死なせてしまう、俺達の脱出が始まった。
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