第5話 明日に向かって

 4


 雷が持っている選択肢はみっつ。

 諦めて他を探すか、ゴブリンがこの場から離れるのを待つか、あの魔物を倒すか。

 三番目は絶対にない。積極的な自殺と大差ないだろう。

 一番目か、二番目。再び水を探しあるいて体力を消耗することを考えると、二番目が好ましい。


 ゴブリンは、全く隠れきれていないが、雷と同じように身をひそめている、つもりらしい。何かを待っているようにじっとしていた。

 雷が見守る先で茂みが動き、鼠によく似た齧歯類があらわれた。鼠にしては大きく、まるで兎のようだ。

 頭の部分が赤く濡れている。光に照らされる赤は、生理的嫌悪が湧き上がる毒々しさがあった。雷は一瞬、それは血の色かと思った。だが、頭部を怪我しているのではなく、鼠に似た生き物は蛙のような粘膜の体皮を持ち、その体皮の色なのだと気づいた。


(ああ……序盤に、いたなあ。鼠の魔物)


 鼠の頭部には毒があり、頭突きされた場合確率で【毒】の状態異常になる。〈神聖魔法〉の技能スキルあげのために、毒に冒されるたびに《浄水クリアウォーター》を積極的に使っていた記憶がある。


 ゲーム序盤の記憶は曖昧だが、一匹一匹は犬よりは弱かった気がする。ただ、犬よりも数多く群れをなしていたので、下手をすると相手にするのが厄介だった。レベル0で仲間がいない状況で大量の鼠に出くわした場合、簡単に袋叩きになった。少しずつHPが削られていき、じり貧になる。仕様が易しいゲームですらそうなのだ。初戦でもさほど苦労せず倒せたはずの犬との苦戦を考えれば、この空想の世界が現実になった場所では、今はエンカウントしたくない魔物だ。


 赤い頭の鼠は、ゴブリンにすぐに気づき、臨戦態勢をとった。ゴブリンはその反応に自分の存在が気づかれたことに悟り、武器の棍棒を構え鼠に急ぎ襲いかかった。どうやら奇襲を狙っていたらしいことを雷は察した。


 鼠が鳴く。ちゅうちゅうなどいう可愛らしい擬音などでは表現できない、濁点をつけて勢いつけて吐き出すような鳴き声だった。

 がさがさと音をたてて毒鼠があらわれる。総計五匹の毒鼠は、あらわれるなりゴブリンに突進して頭突きをしかけた。

 ゴブリンはそれを棍棒で打ち返す。まるで暴投をものともしない巧みな強打者のごとき姿だ。三匹の毒鼠を見事退け、二匹の鼠の頭突きを足にくらったが、少しふらついくだけですぐに持ち直し、残りを足で蹴り付けた。


 不気味な相貌を得意げに歪ませて、五匹の毒鼠を見下ろす。

 ゴブリンは不揃いな歯が生えた口を大きく開け、一匹の鼠の胴体にかぶりついた。骨が砕け、血が飛び散り滴った。臓腑と肉を食い漁る音が、ほんの短い間だけのことなのに、雷の耳に生々しく焼きついて残る。


 短い食事を終えたゴブリンは、残った大きな鼠のしっぽを掴み、四匹の獲物を手に水場から去っていった。


 その背中を見送る雷は、静かな衝撃により驚きを隠せなかった。

 魔物たちによる弱肉強食があるのだ。

 ここは作られた世界ではないのだとまざまざと感じた。雷はここをゲームに似た世界と把握していたが、彼の中にあった想像よりもはるかに現実味をおびているのだと認識をあらたにした。 


 ゲームでは魔物間による争いなどなかった。プレイヤーの属するひと側に襲いかかる一蓮托生の存在だと思っていた。

 しかし、現実では魔物であっても生きるためには魔物同士で争うものらしい。 

 ふつうの獣とて、肉食獣は狩りを行うのだから、当然と言えば当然なのだ。彼らは生きているのだから、食事だって必要だろう。自分にとって空想の世界の生き物だったからといって、霞を食って生きているはずはないのだ。


 この光景に、雷が今までゲーム知識を前提にして抱いていた世界への印象と、この世界の現象の齟齬が少しだけ正された気がした。

 それに関して特に良し悪しがあるわけではないが、勘違いを続けているよりはましな結果だった。雷の無知が原因で、何か良からぬ事態を引き起こすこともあるかもしれない。

 雷はゆっくりと、この世界を知っていく。


 5


 待ち望んだ水だ。

 においをかぐ。当然だが、水道水のような塩素臭さなどはない。見慣れないくらいに澄んだ水で、岩場から細く滴る水を掌でためるとずいぶんと冷たかった。


 細菌とか寄生虫とか、考えたら負けだ。雷は居直った。ここでためらっていたら、ここまで歩き詰めだった努力は無と帰す。また驚異となる魔物や獣があらわれないとも限らない。さっさと水を飲み、試験管にもほんのわずかでもいいから水をためて、ここから少し離れよう。

 雷は毒を浄化する《浄水クリアウォーター》の準備をしてから、水に口をつけた。


 水だった。


 心底ほっとする。

 こくりと喉をならし、飲み込む。

 体がじんわりと水に満ちていくことに、泣きたくなるくらいの感動を覚えたのは初めてのことだった。ここは、その気になればいつだって水分を得られるような場所ではないのだ。

 掌をゆっくりと湿らせていく水は、熱中症寸前の朦朧とした意識で飲む水以上に、価値があるのだ。


 日本がどれほど恵まれているか。水資源がいかに大事かとテレビでもインターネットでもあれこれと聞いていたが、正直他人事だった。

 喧伝内容がいかに正しかったのかを、雷は骨身に染みるほど味わった。それによって心を改めるような性格をしてはいないが。


 掌にわずかにしかたまらないのが、もどかしかい。

 掌に一口分あつまるごとに、待ちわびたかのように飲む。

 とくに変な味がするようなこともなく、ミネラルウォーターのように飲みやすい水だ。

 回復薬ポーションに比べればじつに美味い。


 ここがゲーム世界を現実化したような場所ならば、環境汚染とはとおいはずだ。酸性雨など降らないだろうから、水も汚くならないのだろう。もしかしたら、日本の水よりもずっときれいかもしれない。

 雷は時間をかけて喉をうるおした。


 満足するまで水を飲み、空になった硝子管に水をいれる。

 岩から漏れ出る水は少量で、細い試験管ですらなかなかたまらない。

 周囲を警戒しつつするべきことを終えると、雷はその場から離れた。

 入れ替わるように、黒い小犬がきた。

 雷は犬の姿を認めるとあわてて身を藪の中に隠した。


 6


 チワワによく似た黒い犬は、ちいさな泉の水を舐めていた。舌が水をすくうたびに滴が水面を叩く音がする。

 さきほどのゴブリンではないが、奇襲という言葉が頭をよぎる。

 あちらは雷に気づいておらず、また犬が雷に気づいたらこちらに戦意がなくてもまた襲いかかってくるかもしれない。

 《強打撃》ならあの犬を倒せるだろう。その一撃では足りず、通常の打撃がいるかもしれないと考えるが、雷はHPという厳粛な数値がないことを逆に強みとした。


 それこそ残りHP1で動けるのか、という話だ。


 胴体の骨が折れるほどの負傷を受けかろうじて即死は免れても、まともに動くことは不可能なはずだ。

 血を見るのは気持ち悪いし、痛いのは純粋にいやだ。だが、雷は戦う選択肢に重きを置いた。


(きっと、今のままじゃだめだ。レベルアップが必要だ)


 この森からいつ出れるのかもわからない。

 それまでの間に魔物と戦うことになるだろう。生きるためには、強さが必要だ。

 さいわいなことに、雷にはわかりやすい目安がある。生命力も魔力も体力も数値になってくれなかったが、レベルという指標がある。ステータスもあるのだから、レベルアップすれば単純に身体能力があがるはずだ。その上昇した能力値は確実に雷の生存率をあげる。


 毒鼠の群れ五匹は、雷では相手にもならずに噛み殺される。そんな鼠をものともしないゴブリンには、あの棍棒でやすやすと殴り殺される。

 それが予想できるから、このまま逃げの一手で足踏みを続けるよりは、勝てる相手には積極的に仕掛けて、自らの糧にするべきだ。


 雷は極力音をたてないように棒を握った。

 動物というのは人間が思うよりもずっと俊敏で、完全な不意打ちはきっと難しい。

 そろそろと音を殺したつもりで忍び寄っても、きっと途中で気づかれる気がする。ならば、一気に距離をつめて思い切り殴る。


 草を踏み、土を踏み、枝を折った。

 音に気づいて振り返る黒い小犬。雷の姿を認めて、こぼれおちそうな丸い目に凶暴な光がともった瞬間、目があった気がした。

 過剰な攻撃性さえなければ、あどけない姿だ。懐いたらきっとかわいいだろう。こんな場所で孤独をいやしてくれる存在になったら、雷はちいさな命に依存してしまったかもしれない。

 けれどもお伽話のような都合のいいことは起きないのだ。

 だから、聞く人が聞けば残酷だと眉を潜めて糾弾すらしそうな行為を、雷は選ぶ。

 ただの犬と変わらぬ姿に、棒で打ち据えることにためらいはなかった。


(強打撃!) 


 頭蓋を割るように棒が小さな頭に減り込んだ。衝撃に眼球が飛び出る。視神経とつながった目が落ち、やがて重力に耐えきれず細い糸が切れて転がっていった。


(倒した)


 殺した。


 雷は膝をおる。棒を杖がわりに体を支えた。ひどい目眩がした。このまま体が横になったら、意識がきっと落ちてしまう。息を整えることだけを念頭におき、雷は必死に目を見開く。耳鳴りのように全身の血がざわめいている。どっと汗が噴き出て、灼けるように熱くなった全身を冷やした。


 こんな状態でここにいるのは危険だ。また犬や鼠、そしてゴブリンが来たら、雷など一瞬で殺される。

 雷が、手にかけたばかりの黒い犬のように。


(ゲームみたいに、SPが0になってもせめて歩ければいいのに)


 体力消費による急激な疲労により、ここがプログラミングによる四角四面の仕様によって形作られているわけではなく、雷の中の常識に近い法則があることがわかった。そして、雷の経験よりも体力の回復には多少融通がきくことも。

 痙攣するように手足が震えるが、これだけ消耗しているのに少しじっとするだけで再び動ける気がしてくる。最初の津波のような疲労感にさえ耐えれば、なんとか意識を保ち、すぐに動けるようになる。


(こんなところで、気絶してたまるか)


 雷はロッドを支えにして、体を起こす。

 水場からはなれた。

 細い獣道を背にし、引きずるような動きで森を進んでいると、雷であればすっぽりと身を隠せそうな木のうろを見つけた。

 雷は杖をついて歩くこともやめて這うようにそのなかにおさまると、そろそろ寝ても大丈夫だとおもう間もなく、気絶するように眠りについた。

 

 7


 朝、試験管の中にあるわずかな水で喉を湿らせながら雷は手帳をひらいていた。

 犬を二匹倒した経験値で、レベルをあげられないか確認したのだ。

 ゲームでは、ジョブレベルの経験値は割り振り制だった。経験値を得ると勝手にレベルが上がるのではなく、戦闘やクエストで得た経験値を自分がレベルを上げたいジョブに割り振る。割り振った経験値の分、レベルがあがる。ゲームに歯応えを求める層に、このシステムは評価が高かった。自分の好きなタイミングでレベルを上げられるから、強くなりすぎない。


 ステータス画面で操作していたジョブレベルの経験値だが、その代わりをするのがこの手帳なのではと考えた。

 結果、雷は肩をおとすことになる。

 思ったとおり、レベルアップ操作自体はできそうだった。材質は紙に見えるくせに、割り振っていない経験値の数値をさわると、タブレットのドロップ操作のように経験値の移動ができる。

 レベルアップの仕様がわかり先行きが明るくはなった。しかし、レベルをあげるにはまだ足りない。


 レベル0のジョブをレベル1にするには、100の経験値が必要だ。

 昨日の戦果は、黒犬二匹で20の経験値。失神寸前になるまで疲れ果てたにしては、散々な数値だ。

 あれだけ苦労したのだから、犬一匹の経験値100でもいいだろう。いじけた感情が湧き上がり、雷は誰にともなく悪態をついた。


「ああ、くそ」


 あと八匹、犬を倒さないとレベルは上がらないらしい。

 緊張と警戒と恐怖で神経をすり減らし、あの疲労困憊とあと八回も戦うのは現実的ではない。

 万全の体調で戦える状態を維持する材料を、雷はもっていないのだ。

 水の調達の目処はついたが、食糧確保の問題もある。

 水を飲めばすぐには死なないが、栄養をとらなければ体は衰弱していく。


(最悪毒消の魔法を使いながら、その辺に生えてるもんを食わなきゃいけないわけか)


 雷は再び気落ちした。とんだサバイバル生活だ。

 森の出口を探す。

 昨夜ずいぶんと長いことあるいた。子どもの足だから距離は稼げていないかもしれないが、主観ではそうとう進んだ気がするのだ。

 しかし、これが逆走して森の奥まったところに向かっているのか、それとも森の終わりに向かっているのかそれがわからない。


 だれか答えを教えてほしい。痛切に願った。生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。


 このままだと、自分はどうなってしまうのか、それもまたわからない。どうすればいいというのだ。

 わからないことだらけだ。


 なにより、どうして自分がここにいるのか、知りたい。何か意味があるのか、なんらかの重い役目を託されたのか。それとも神のような存在の気まぐれで助けられたか遊ばれているだけで、こんな場所に放置されているだけなのか。

 大きな木のうろの中で、雷は膝を抱えた。 


(とにかく、今するべきことを考えろ)


 雷は己をさとす。

 膝に埋もれさせた顔をわずかに上げて、朝日をうけている森をみつめる。

 人の手などはいっていない原生林、見知らぬ植物に満ちておだやかに光り輝く緑の世界。幻想的な美しさを裏切る命の営みの過酷ささえなければ、絵画を見ているような気分にさせる。

 大自然のありふれた、けれども尊い美しさだった。しかし、そんなものに見惚れる余裕などない雷は、考えなければならない。


刻印ルーン魔法を使ってないな。使えるものは、がんがん使わないと。《遅滞スロウ》は武器に刻印ルーンを描くと、使用が可能になるんだよな。

 《停止ストップ》は魔法を使うと刻印ルーンが描いてある礫が飛んでいく。あー昨日これに気づけばよかったんだ。馬鹿だな俺、これを使えばもっと安全に犬と相手にできたじゃないか!)


 乱暴に頭を掻いた。結果的に辛勝したが、自分を把握していればもっと安全なやり方を選べたことに、雷は悔しがる。後悔後に立たずだ。

 この反省を活かし、これからは有用な手段はつかっていこう。


 〈刻印ルーン魔法〉のことを考えていると、頭の中に現在使用可能な《遅滞スロウ》と《停止ストップ》の魔法文字と読み方、効果や意味、知恵袋のような細かい成り立ちがごく自然に思い浮かぶ。この二つの魔法よりもレベルが上の魔法は、魔法文字だけは頭の中に浮かぶのだが、読みも意味もわからない。プレイヤーの知識としてはある程度知っているが、どうやらこの状態では使えないだろうな、というのは察した。知っていても、自らの身になっていない状態だ。


 スキルレベルが必要レベルに達していないのだ。

 不思議なことに、プレイヤーだった雷はゲーム世界に描かれた文字なんてうろ覚えだったのに、今では手本も見ずに記憶だけで正確に描ける自信がある。


 刻印ルーンの魔法文字は表意文字であり、その刻印を物質に刻むことからはじまる。

 〈神聖魔法〉のように魔力を用いて魔法を生成するのではなく、予め刻んだ刻印ルーンに魔力を注ぎ込むことで魔法が発動する。〈神聖魔法〉や〈属性魔法〉よりも手順を多く必要とするが、そのぶん便利なところもある。


 魔法文字には二種類ある。

 一度使用すると消えてしまうものと、恒常的につかえるものだ。


 恒常的に使用できる刻印ルーンは装備品に刻むことができる。たとえば《遅滞スロウ》ならば武器にその魔法を付加できる。魔法を使えなくても、その武器を装備していると攻撃したときに確率で追加攻撃が発生するのだ。

 〈刻印ルーン魔法〉を使用してその武器を使うと(相手の能力値によって失敗することもあるが)確実に魔法を発動させることができる。


 防具ならば、相手からの《遅滞スロウ》系の攻撃に対する抵抗力があがる。


 《停止ストップ》は一度使用すると消えてしまうもので、装備品には刻めない刻印ルーンだ。


 まずは《遅滞スロウ》を刻もう。

 そうは思えど、雷はそこから手詰まりする。刻印を武器にいれるにはどうすればいいのかわからない。

 可能とするものがあるならば、それはシステム操作の代替えとなる手帳だ。魔法欄を開き、《遅滞スロウ》の文字を叩く。しかし、何も起こらない。


(初期装備のロッドは刻印ルーンを刻めなかったけ? いや、そんなはずはなかった)


 武器ごとに刻印ルーンを刻める数が決まっている。

 最初期に手に入るどんなに弱い装備でも、一個くらいは刻印ルーンを込められた。


(もしかして、システムのボタンで解決じゃなくて自分で彫らなきゃいけないのか……?) 

 

 雷は結んだ唇を引きつらせた。この、魔法文字を描ける自信というのは、魔法文字を描くことも技能スキルのもたらす能力の範囲内だからなのだろうか。


(ここは念じるだけで解決するものだろ? そうだろ?)


 願いをこめながら雷はロッドを握った。何も起こらなかった。

 嫌な予感が事実になりかけている。


(うわー。まじか。もしかして)


 雷はうろの中で《停止ストップ》の魔法を使った。使うつもりで、念をこめた。

 この魔法は、ゲームでは《停止ストップ》の刻印ルーンが描かれた礫があらわれ、敵に向かって飛んでいく。だが、周囲に一切変化はない。召喚されるように石が出てきてくれなかった。


(魔力でストップの効果を持つ石が勝手にあらわれてくれるわけじゃないのか? もしかして、ストップを使いたいなら自分で、石に、文字を描けと?)


 その不親切な仕様に気づいたとき、雷は気が遠くなった。


(うそだろ!? つっかえねえ!)


 頭を抱える。なんて手間がかかるのだろう。だいたい、彫刻刀もペンもインクもろくにないような場所で、どうやって刻印ルーンを刻めばいいといのだ。


(とりあえず、飯だ。腹がくちくなれば何かいい案が思い浮かぶかもしれない)


 覚悟を決めてうろから這い出る。

 食料を確保しつつレベルを上げて安全性をあげながら、森の出口を探る。

 森の出口を見つけるのが先か。はたまたレベルがあがるのが先か。


(先に森から出たいなあ……はあ) 


 雷はロッドを片手に構え、森の中を分け入る。

 先がわからない不安を抱えながら雷はすすむ。それでも、生きることを諦めない蒼い瞳は力強く輝いていた。

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