第3話 ツノとうさぎと特約と
もふもふキター!穴が空いた月以外で異世界を感じる物を初めて見た!
「こいつはホーンラビット(仮)と名付けよう!おいでおいで、怖くないよ」
手のひらを見せながらゆっくりホーンラビットに近づいていくと逃げる気配がない、まさかの人に懐くタイプ?家族増えちゃう?
驚かさない様にゆっくりとした動きでしゃがみながら近づいて行くと、逆にホーンラビットもこちらへピョンピョンと近づいて来た。
「かわいい、癒される」
ホーンラビットとの距離が2メートルぐらいになった時、突然身を屈めたと思ったらホーンラビットが消えた。
その次の瞬間僕の首元にツノが突き刺さり激痛と共に息が出来なくなってそのまま意識を失ってしまった。
気がつくと河原で仰向けに寝転がり空にはあの穴の空いた月が昇っていた。
「え?いつ寝たっけ?」
寝る前の記憶が曖昧だったのでよーく考えて思い出してみる。
「違う!ホーンラビット!!」
急いであたりをキョロキョロ見回すとホーンラビットの姿はなく、思わず首元に手を当てると穴は空いてなかった。
「夢?じゃないよね」
そんな事を呟きながらさっきからなんとなく涼しいお腹のあたりに目を向けると。
「うあぁぁ、何これ!?」
シャツのお腹の辺りがビリビリに破れて血まみれになっていた。
「えー、あの兎肉食なのー!?」
どれだけ時間が経ってるのか分からないけど、お腹も首も傷は無くなっていたが明らかに一度食べられてる。血の跡も乾いてカリカリになってるし。
ホーンラビットが食べたのか別の動物が来たのかはわからないけど、ホーンラビット怖すぎる。
「それにしても本当に不死身なんだ・・・。そしてさっきまで死んでたのかぁ、しかも兎が肉食とか異世界ヤバい」
ホーンラビットの事を思い出したら急に色々怖くなったので、周りを見て急いで落としていた蛇の皮を拾い、水を汲んで拠点へと帰る事にした。
月明かりのおかげでなんとかまっすぐ拠点に帰れたけど怖くて眠れない。
「兎でアレって狼とか熊とかどうなるんだろう」
色々想像してしまうと焚き火の火を強くして朝まで震えているしかなかった。
「ふぁぁぁ、もう朝かぁ」
拠点で縮こまっていたので体がガチガチに凝ってて痛い。伸びをして気持ちを切り替える。
「ポジティブに考えると逆に良かったのかもしれないね、不死だということが分かったし。よし!次は負けない為に武器を作ろう!」
よく考えたら剣と魔法の世界とか言われてたのに手ぶらでいたのが悪かったんだ。
そうと決まればまずは腹ごしらえ!とりあえず昨日持ってきた蛇の水筒を火に当てお湯を沸かす。
意外と焦げないんだね、中に水が入ってると。ちょっとどこかが漏れてるけど簡単にお湯が沸いたので飲んでみよう。
「こっこれは!口に含むと土の香りが広がり、喉を通る時は生臭い蛇の香りが鼻を抜けて脳天に突き刺さる!うん!まずい!」
わかってたけど臭くてまずい!まぁでもお腹を壊さないだけマシか、他に何もないから飲むけどさ。
しょんぼりしながら、水と一緒に残りのスモークされた蛇をかじり朝食にしよう。
「硬い!もはや鈍器になりそう、保存は厳しいなぁ冷蔵庫が欲しいね」
スモークされた蛇は水分が抜けて硬くパサパサになっていた。蛇スモークをまずい蛇水で流し込み朝食終了。
「でもこんなご飯でも食べたら元気が出て来たぞ」
とりあえずその辺に落ちていた石を2本の棒で挟み蔓で縛っただけの簡単な石斧を作ってみた。
「心許ないけど手ぶらよりマシだよね、よし!今日も頑張ろう!」
声を出して自分を鼓舞しながら今日も探索へ出発した。
とりあえず水が無くなったので川へとやってきた。ホーンラビットを警戒しながら川の石を何個も叩きつけて割ってみる。
その中で見つかった剥離性のある石をさらに細かく叩き整形してあとはひたすら別の石に押し付けて研いでいく。
「ジャジャーン、石斧が石器から打製石器に進化したよ!」
ついでにナイフと槍も作ろう。同じ方法でナイフと穂先用の石も叩き出して無心で削った。
「なんだろうこの物を作る充足感は、もはや一種の娯楽かもしれない」
槍は硬そうな2メートル位の棒を探し先端を割ってそこにさっき研いだ石を嵌めて蔦で固定した。
「完成!ゲイボルグ(仮)」
槍でその辺の木を突いてみると意外と刺さる!斧も枝を切断するのがかなり楽になった。
「もっと早く作っておけばよかったなぁ」
これなら拠点を作る時も、もっと早く作れたしもっと綺麗に作れそうだ。
水を汲んで斧を使い薪を集め、また無花果風の青い実を見つけたので収穫して拠点へと帰った。
焚き火に薪をくべながら青い果実を何個か食べてやることもないので早いが眠りにつく事にした。
ふと目が覚め空を見ると月がかなり高いところに上がっていた。ベッドに寝ころびながら考える。
「とりあえず川を下ってみるか、ここで暮らしててもただの原始人だしなぁ」
一応不死なのが確認できたし多少無理しても行けそうだよね武器もあるし、でもお腹は減るし喉も乾くしなぁ。
「よし明日バァ、オロロロロロロ」
まさかのマーライオンパート2だった。
「ぐあぁはぁ、ええええ?何これ?まさかあの実が毒かなんかあっオロロロロロロ」
上からも下からも全部出てやっと収まった頃には空が白み始めていた。
「もう朝か、安らかに眠れる日は来ないのかな?やっぱり未知の食べ物は怖いなぁ」
僕はぐったりとして何もする気が起きなかったので横になって目を瞑った。
太陽が中天に登る頃やっと動き出す気力がわいてきた。
「意外と回復が早いなこの体、不死が効いてるのかな?」
寝ていても何も解決しないのでお腹を摩りながら仕方なく起き出して探索をする事にした。
槍と斧を持って探索へ行くと今までと違い、邪魔な枝葉を払いながら進め気分が良くなった。
鼻歌を歌いながら枝を払っていると上からドサリと何か落ちて来た。
「やった未知じゃない食べ物!」
色は黄色でこっちを向いて鎌首をもたげている、おかしいな?首が交互に揺れて早すぎて二個に見える。
「いや違う、ホントに2個あるよ顔が!」
今回蛇は前のより大きく1、5メートルほどあり、首が二股に分かれ双頭になっていた。そして双頭の蛇が急に此方へ飛びかかって来た。
「あぶなっ!」
咄嗟に横へ避けたら蛇はそのまま逃げようとしたので、逃げられると思い急いで尻尾を掴んだが失敗だった。
「痛った!」
尻尾を掴んで引っ張ったらそのままの勢いで頭がこっちを向いて顔に飛びかかって来たので、咄嗟に左腕で防いでしまい腕を噛まれてしまった。
左腕に噛みついた蛇を石斧を何度も叩きつけ2本の首を叩き切った。
噛まれた腕が焼ける様に痛い、一応毒があるかもしれないので吸い出してみたが痛みは変わらなかった。
「一度拠点に戻ろう、まぁ戻っても手当てする物もないけどね」
拠点に戻って蛇の皮を剥いていると今度は寒くなって来た。腕を見ると肘から先が3倍程にパンパンに腫れて濃い紫色になっていた。
「うわぁ、めちゃめちゃグロいな人間の体ってこんな色になれるの?!」
手当てをする物が何も無いので傷はどうする事も出来ない。
「あーだめだ、身体中痛いし物もブレて見える、横になろう」
剥いた蛇を手に持ちながら寝床に戻ろうと思って歩き始めた所で意識を失ってしまった。
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