第24話 助け
「今年から此処のショバ代として月に何回か闇組織の方が集金に来られるんです。それで店の改装料もないし、遂には店が続けられなくなりそうになってるんです……」
ショバ代……みかじめ料ね。
「……何かしたんですか?」
「いえ、特に何もしてない筈なんですけど」
「……」
始めた当初からショバ代を貰うなら分かる。何故今年からいきなり……
「って言うか、店員さんじゃなかったんですね」
「あぁ、はい。一応店長をやらせて貰ってます。
店長は恥ずかしそうに頭を掻く。
「バイトとかは雇わなかったんですか?」
「最初は居たんですけどね……私が"平凡者"だと知ったらこんな店でやってられるか! なんて言われてしまって……ははっ」
店長は申し訳なさそうに此方の様子を伺いながら笑う。
はぁ、なるほどな。此処でもか。
「店長……平凡者だったのか」
「ッ! ……はい」
ビクッと怯えた様に顔を伏せ、反応するその哀愁漂う姿に、颯太は思わず眉を顰めた。
「……そんな反応しなくて良いですよ。俺も平凡者だから」
そう言うと、目を見開き驚いた様子で此方を見上げる。
「き、君もかい?」
「はい。ほら見て下さい。腕も耳も変化してないでしょ?」
「本当だ……!」
花見は俺の袖を捲り、マジマジと腕を見つめる。
……そんな反応にもなるか。基本平凡者は中学校に上がった時点で"数が減ることが多い"からな。
皆んなとは違う。劣っている。そう思われて精神が壊れて行ってしまう人が殆ど。仲が良かった友達も自分が平凡者だと分かった途端、離れて行く。
俺の歳まで生きていられるのが凄い事なのだ。この驚き様も納得できる。
店長の歳をは大体40代ぐらいだと考えたら、この人の方がもっと凄い事なのだが。
「折角なので店長の事お助けしますよ」
「……いいんですか? 私は平凡者ですよ?」
「それを言ったら俺もですよ」
俺がそう返すと、店長は涙ぐんだ様子で両手を握ってくる。
「ありがとうっ!!」
「お礼を言うのはまだ早いですよ。店がこれからちゃんと経営出来る様になってから言って下さい」
「!! あぁ! ありが……いや、よろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく」
「それでお金はどれぐらいの額を払っているんですか?」
「えーと……大体月にこれぐらいですかね」
俺はご飯を食べながら、正面の椅子に座っている花見に言う。そして花見は紙に大体の金額を書き込んで見せて来る。
「………取られ過ぎじゃないですか?」
「は、はい。でもどうにも出来なくて。断ったら殴られたりしますから……」
「なるほど……」
まぁ、平凡者だったら納得できる出来事だな。
「もう、それを避けるにはお金を渡すしかなくて!!」
怯えているのか、自分の体を抱きながら叫ぶ。
「………次にそいつらが来る日は?」
「え、明日ですけど……」
「分かりました。俺が何とかしてみますよ。店長さんは安心して待っててください」
「え?」
「ご馳走様でした。お金此処に置いときますね」
「ちょ、ちょっと!!」
俺は花見が呼び止めるのを無視して、店から出る。
花見から見た颯太は何処か自信あり気に見えた為、動揺していた。
平凡者が何が出来る、と。
頼る相手も居ないだろう、と。
平凡者の為、颯太の立場、力、何もかも自分と同じだと思っていた。
しかし、花見の考えていた事は最初からまるっきり違う。
颯太は平凡者に見える先行者だと言う事。
しかも、普通の進化先ではない。今まで見た事がない様な進化先なのである。
進化してまだ間もないが、スキルを2つ持つダブルホルダー。
そして、闇組織御用達である情報屋inf。日本でもトップクラスの情報屋と取引を結んだ者。
将来的にはスキルを5つ持つクインティプルホルダーになる、そんな男の手を借りた事を花見はまだ知らない。
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