必殺・応援団・ギリギリ

「佑っ!お前必殺技とかないのかよっ」


 焦りを感じ始めたのか永遠とわが声を上げる。そんな都合のいいものは知らないし、あったとしたらもう使っている。でもそれに頼りたい気持ちをわかる。でも、いろいろな能力をコピーしてわかったがそんなに便利な力を使いこなすにはそれなりの修練が必要なのだ。コピーしただけで使いこなせるものほど単純なものはない。


 それこそ必殺技なら氷姫ひめや永遠のほうがその域に近いだろう。それくらい他人の力をコピーするということは難しいのだろう。たとえそれが物語の力で無意識にやれると言ってもだ。


 ギリギリの状況が続くなかでそれを打破できない時間が過ぎていく。どうにかそれが続いているのはひとえに隆司りゅうじくんのおかげだ。他の皆は対した戦力になってないし、決定打はないままだ。


「佑さんこれをっ!」


 氷姫が氷の剣を投げてくる。それを使えと言う意味だろうか。確かに騎士の力で生み出した剣より氷姫の剣の方が切れ味がいいのかもしれない。


 受け取ったその剣は不思議と冷たくはなく、手に持っても溶け始める様子もなく、手によく馴染む。


「頑張ってください!」


 前衛で攻撃を繰り出すことが出来ない氷姫としては精一杯の応援だ。佑はたしかにその小さな応援団からの声援を受け取った。不思議とそれが力に変わっていく気がして。ちょっとだけでもやれるという気がしてくる。

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