ベスト100・ひらめき・離婚

「いや、まあ。流石って思うけれど、それはお嬢ちゃんにしてはってところだからね。そんな感じで終わった感を出されても困るわけよ。逆に言えばほんと両親が離婚したくらいは困ったんだけどな」


 かえでが振り下ろした包丁は侍にしっかりと止められている。刀ではない手で包丁を受け止めているのだ。


 包丁の刃は決してなまくらではなく、むしろきちんと整備をされている鋭い刃のはずだ。それをいとも簡単に手で受け止めているのは異様な光景ではある。


 ひらめきがせっかく生きたと思ったし完全に虚を突くことに成功していたはずなのにそれでも防がれてしまった。お互い両手がふさがっている状況で密着もしてしまっている。単純な力なら侍のほうが上でさきほどからじりじりと押されているしなんなら刀がもう少しで体に押し付けられそうになっている。


 息を大きく吸って体を膨らませるようにして力を加えて侍との距離を取る。


「へぇ。判断も悪くない。これまで戦った相手でベスト100には入るよ」


 そう余裕がある軽口をたたく侍にどう攻めて良いものか考えあぐねてしまう。

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