罪悪感・一生のお願い・エステ

 お相撲さんの家に集まったみんなはずっと黙っている。いや永遠とわさんだけは喜美子きみこさんのエステを受けている。回復効果があるというそれは永遠さんの開いてしまった傷を癒やす効果があるらしい。


 しかしその状態でも話はできるはずで、今後の話をしなくてはならないはずなのだけれど罪悪感からかそういった話題もでない。


 仲間も増えた。武器も手に入れた。そうであればきっとあの人達に勝てると、そう思っていたのに。実際対峙した四天王はここにいる誰よりも強かった。組長が最弱と呼ばれていたのもいまならばわかる。


 もうまもなく解放戦が始まる。それはこの街どころかこの世界をも揺るがす可能性がある非常事態だ。


 ただたすくさんの情報が欲しかっただけななのに、こんなことに巻き込まれるなんて思いもしなかった。それに佑さんそっくりな弾丸と呼ばれる彼のことも気になる。


 単におんなじ顔をしているだけなのか。それともなんらかしらの関わりがあるのか。


「とりあえずどうするのよ。これから起こることを放ってなんておけないでしょ」


 夏希なつきさんが重たい空気を振り払うかのように話し始める。それはこの沈黙に耐えられないからだけのような感じもした。その言葉に力は感じられない。


 言っていることは間違っていないしどうにかしなくてはならないのは確かだ。でもどうやってそれを成し遂げられるかはわからないままだ。


つとむさんに一生のお願いをしてみるとか?あの人ならどうにかしてくれそうじゃない?」


 かえでさんの言葉も一理あると思う。あの人ならこの事態を解決してくれそうな気もする。でも、そんなお願いで助けてくれるのであればここに一緒についてきてくれているはずだとも思う。


 なんらかの理由でこれないのだ。でもそれはこの世界の命運をかける今の状況よりも重いというのか。


「あの人が出たら本末転倒だ。あのドラゴンが世界に放たれるとおじようなことが起こりかねない。それは却下だ」


 永遠とわさんの言葉に驚くことしかできない。勉さんはあのドラゴンと同じくらい世界に認知されてはいけない存在だとでも言うのだろうか。

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