ボディビル・リバース・恋する

つとむさんっていったいなにものなんですか。昔から気になっていたけれど聞いちゃいけない雰囲気だったし。たすくさんも気にしてなかったから。スルーしてたけれど結構不思議な人ですよね。そんなにやばい存在なんですか?」


 氷姫ひめの中の疑問が爆発するように飛び出し続けるのはそれだけ不安でしかたないからだ。話をしていないと沈黙に飲み込まれてしまう。そしたらその先にまっているのは良くない妄想の負のスパイラルだ。


「俺も詳しくは知らないよ。それでもあの人の存在がこの世界において大きな意味を持つのは間違いないらしい。このテーマパークや大きな図書館、それとおんなじくらいあの古ぼけた本屋に意味がある。そう聞いている。でもそれだけだ。詳しいことはだれも教えてはくれない。それこそ存在自体がタブーになっているみたいなレベルだ」


 そんな話聞いたこともない。いうほど黄昏書店を離れて行動したことがないのもそうのだが、おんなじ語り部との交流なんてここにいる人たち以外とはないに等しいのだからとうぜんなのかもしれない。


「そんなすごい存在ならやっぱり協力してもらったほうがいいんじゃ」


 かえでさんの意見はもっともだと思う。それだけすごい存在ならあのドラゴンだってなんとかできそうな気がする。


「それができたら苦労はしてないよ。いままでだってなにが起きたって勉さんは手を出さなかっただろう。そんなことしたら下手したら世界がリバースする可能性があるからだ」

「「リバース?」」


 氷姫と楓の声が一緒に発せされる。


「世界が辻褄を合わせるために自分自身の記憶を辿って元通りにしようとする現象のことだよ。実際に起こっても俺たちは気が付きもできないが確かにある現象らしい。以前に恋する乙女が行き過ぎた愛情で世界をリバースしたとかなんとか」


 そんな物語の中みたいなことが起き得るのあろうか。


「ボディビルの大会に勝てなかった有力選手が、無理やり起こそうとしたって事件もあったな」


 ため息をつく永遠さんはなにか思うところがあるのだろう。しかし今はそれどころではない。だとしたらやっぱりここにいる面子でどうにかしなければならないのだ。

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