小悪魔・ぴえん・泥団子

 変身した永遠とわさんの意地悪な顔がまさしく小悪魔と言ったところだろうか。うろたえるお相撲さんを眺めて喜んでいるようにも見える。


「この街で情報を集めていたらいくつかの場所で耳にしたんだ。どいつも言ってることは一緒。あいつらはここからの解放を目指してるって」


 えっ。永遠さんから放たれた言葉に氷姫ひめはことの重大さに頭が混乱する。

 この街から解放されるということは世界から認知される可能性が非常に高まる。そうなってしまえば世界から排除される。それは連鎖するようにこの街へと繋がっていくだろう。そうすればここにいる人たち、町並みは消されてしまう。


 それはこのテーマパークにとっても由々しき事態だ。それで不穏分子をよそ者に頼んでまで急いで炙りお出したかった理由も納得できる。


「だからといって、おいどんに結びつけるには無理があったはずでごわす」

「そんなことないよ。あんなタイミングで見回りがお相撲さんの家を訪ねるなんてことそうそうあるはずもない。まるで図ったようなタイミング過ぎてあんた自身も焦ったんじゃないか」

「そんなことで、疑われたでごわすか。あいつらを上手く使って追い出そうとしたのに、早すぎるんでごわすよ。まったく使いもにならなくて困ったでごわす。ぴえんとでも言えばわかりやすでごわすかね。人に頼るのは良くない。本当によくないでごわす」


 その言葉の中にだんだんとさっきがこもっていくのが氷姫にもわかった。


「泥団子みたいにピッカピカのまんまるにしてやるでごわすよ」


 迫力ある身体がひとまわりもふたまわりも大きく見えた。

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