罪・勇者・失恋

「パンダさんに罪はなさそうですね。可哀想だと思います」


 とりあえず話に乗っておけばいいのだと即座に判断する。


「お嬢ちゃんもそう言ってくれるっすな。嬉し涙が出るっす」


 それだけで目の辺りを覆い泣き始めているパンダをじっと観ているとその可愛らしさに心がときめいていくのがわかる。しゃべるパンダなんて最初は怖いな、と思いもしたけれどなれてしまえばあのもふもふに包まれてみたいと思う。


「はあ。それで氷姫ひめちゃん。合流できたなら私は行くね。勇者としての仕事も忙しくってさ。やることいっぱいなんだ」


 さらっとおかしなことを言っている気がしたが、物語の中じゃ彼女は勇者なのだ。それを問い詰めても仕方のないことだ。


「おうおう。失恋なんてパーッと騒いで忘れちまおうぜ。ほら氷姫も一緒にこいよ」


 永遠とわさんに促されるまま流されるままに言うことを聞く。もしかしたらこのパンダさんが不穏分子に関わるなにかなのか。こんなに可愛いのに。


「失恋にはまだ早いっす。浮気の誤解を解くっす」


 そうパンダさんは騒ぎながらも永遠さんのあとに続いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る