の逆襲・給食・元子役

「物語関連の事件は一通り追っているんだよ。元子役が物語の力を使って天才的な才能を開花させていることも。プロボクサーが先読みの能力を使って世界チャンピオンになったことも。この間のビルにおける爆破事件も、君の上司がそちらのお嬢さんを目覚めさせたことも、もちろん魔女がひとりこの世界から消え去ってしまったことも。物語から生まれた奇妙な少年ふたりが何者かによって消されかけたこともね」


 次々とライオンの口から放たれる言葉にさすがの永遠とわさんも圧倒されている。その雰囲気に飲まれかけているように見える。それは非常に珍し事のように氷姫ひめは思えて少しばかり自身の中で不安が増していくのがわかった。


「それで。消されかけたふたりのことだけれども。正直言えばわからない」


 身構えていたのにも関わらずライオンから帰ってきた返事に思わず肩を落とす。それは永遠さんも同じだ。


「もったいぶっておいてそれかよ。こんな奥深くまでやってきてなんの情報もないなんてとんだ無駄骨を折らされた」

「まあ。まあ。落ち着けよ。わからないなりもの情報はあるんだよ。でもただで教えるわけにはいかない」

「はあ?なんだよ。俺たちになにをせびるっていうんだ。たいしたものなんか持ってはいないぜ」


 口をはさむ余地がない。話が進んでいくのを氷姫はただ見ていることしかできない。それこそ給食を目の前にして待たされている小学生のようだ。


「最近上で不穏分子が活動しているという情報がある。しかし確信がもてないし、どこのだれが扇動しているのかもわからない。ここまで誰にも気づかれずにやってきた君たちだ。それくらいできるんじゃないかな?」

「なんだよ。依頼ってことか。いいのか。俺たちを信頼して」

「いいさ。それだけ知りたいことがこの手の中にあるのだから。大体失敗してもこちらにデメリットはないしね」


 大人の会話はどんどん進んでいった。

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