カーニバル・加齢臭・誕生日

「君たちは見慣れない顔だね。新入りさんかい?」

「さんかい?」


 一通り顔を見てきたのか、最後に氷姫ひめに近づいてきた犬と猫は仲良さそうにひっつきながら話しかけてきた。ようやく回ってきた順番にホッとし、横になっている永遠とわさんに声をかける。


「永遠さん。起きてください」


 それを見て、犬のほうがなにか疑問をいだいたのか不思議そうな顔……いや、仕草をする。きぐるみの中は普通の人が入っているのだろうか。それともテーマパークを運営しているのは語り部なのだろうか。それでも全員でない気がする。


「彼も君の連れなのかい?珍しいね。パートナー付きとは」

「そうなんですか?」


 少し意外な気がした。恋愛もの物語であればふたり一組でこの世界に現れることが多いような気がしていたからだ。


「場所が場所だからね。あんまりそっちけいの人たちは現れないんだ。カーニバルには向かないしね。このテーマパークには必要ないかな」

「ないかなー」


 語り部だろうと誰だろうと受け入れていたはずなのにと今度は氷姫が不思議に思う番だった。


「そんな話はどうでもいいけどよ。探している人がいるんだ。どっちでもいいんだが知らないか?」


 そう言って永遠さんはふたりの写真を犬と猫に突きつけた。


「突然なんだよ。そんな人達は知らないよ」

「知らないよー」


 ここに情報があるはずだと確信に近いものがあったはずなのだけれど、あっさりと知らないと言い切られてしまった。


「はぁ。臭え加齢臭ばらまいているくらいだから、おっさんなんだろうけどよ。老眼も進んでるんじゃないのか?よく見ろよ。ほら」


 あまりに乱暴な永遠さんに氷姫が混乱する。残念だったのはわかるけれどそんな態度を取る必要はない。


「次の誕生日迎えられなくしてやろうか?」

「やろうかー?」


 さすがの犬と猫もブチギレたのか、その言葉は先程もまでの可愛い声とは違い、どすの利いたおじさんの声が聞こえてきた。

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