ケーキ屋さん・リア充・いい意味で

 走り去っているのは男の人で手にはまるまるワンホールのチョコレートケーキを抱えている。それをみて、お腹が空くのを限りなく我慢する。それにもおかしいと氷姫ひめは自分でも感じる。こんなに食いしん坊だったけな。


 男はどうやらケーキ屋さんからケーキを万引きしたらしい。そんなに食べたかったのか。それとも、そういう物語の設定なのだろうか。


「おいっ。氷姫。とりあえず追いかけるぞっ。おいどけ、リア充ども」


 永遠とわさんが走り始める。ケーキ屋さんの前にいる人達をかき分けながらだ。カップルや夫婦が多いの中、そう叫ぶのはどこか嫉妬でも入っているのだろうか。


 動きにくそうな永遠さんに対して氷姫のほうが身体が小さい分、走り抜けやすい。しかし、万引き犯はケーキを抱えているのにも関わらず走るのが早い。その迫力もあってか通行人も道を開けてしまっているのもあってその距離はどんどん離れていく。


「くっ。仕方ねぇ。力使うぞ」


 永遠さんがそう叫ぶ。永遠さんは様々な能力を使いこなすけれど、その中に身体強化がある。それを使えば追いつけるかもしれない。


 永遠さんが人目を気にせず姿を変える。ここだからできることだ。ここでなかたっら人目に付きすぎて世界から弾かれてしまう。でもこの場所自体が隠されているものならその力は自由に使える。


 その姿が氷姫とおんなじくらいの年の女の子に変わっていくのはいつもいても不思議なものだ。それにそれが可愛いのだからなおさらだ。いい意味で友達になれそうだと思ってしまうのだけれど中身が永遠さんのままなのでいま一歩踏み込みない。


「はぁぁっ!」


 声まで可愛くなった永遠さんは飛び上がると建物の屋根を飛び回りながら万引き犯を目指して一直線だ。

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