万引き・ふわふわ・世界に一つだけの

 お子様ランチとえばふわふわのオムライスを思い出して隆司りゅうじくんが連想される。いつだって美味しそうに口に頬張るすがたはいつ思い出しても可愛らしいものだった。


「ほら。夕飯まで時間があるから情報収集いくぞ」


 永遠とわさんはそれを知ってか知らずか目的のために動き続けようとしている。氷姫ひめも動かねばならない。それはわかっているのだ。それでも、お子様ランチが気になってしかたなかった。


「氷姫。そんなにお腹すいたのか?」


 なんでバレたのだろう。


「なんでって物欲しそうにしてるし。氷姫としては珍しく気が散っているだろ。ここまで核心に近づいているのにおかしい気がしてな」


 言われてみれば確かに妙な気がする。自分のことなのに他人事のようにも思う。


「なあ。ここってそういう効果でもあるん?」


 永遠さんがお相撲さんに聞いているのもどこか他人事だ。


「ふむ。そいうのは聞いたことないでごわすが。そもそも語り部がここにいつくことが少なくて前例があまりないでごわす」


 おそらく世界に一つだけの町だ。それもかなり特殊。


「そうか。こんなに冷静じゃない氷姫は始めてなんでなにかしら原因があると思うんだけどな。まいいか。とりあえず情報収集に行ってくるよ」


 永遠さんがそうこの場を離れようとしたときだ。


「万引きだっ!だれかそいつを捕まえてくれ!」


 そう近くで叫び声が上がった。

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