文房具・ヒーロー・お母さん

「お母さんとかいないのか?やっぱり物語だし」


 不躾にお相撲さんに質問する永遠とわさんの神経が信じられないと思いつつもここでも生活はどんなものだろうという疑問はやはりある。


 家に連れて行かれたと思ったらお茶が出てきてまったりし始めてしまったときのことだった。氷姫ひめは部屋の隅に置いてあるお相撲さんがあしらわれた文房具に気を取られていた。


「いないでごわす。当然といえば当然でごわす。ここにいる者たちは自分の意志とは関係なしに呼び出された者たちでごわす。そこに自分の設定をどこまで持ち込めるかは決められないでごわす」


 そもそも物語がこちら側に来るときってどんな感じなのだろう。そもそものこの世界をどう認識しているのだろうか。いや、認識できるのか?


「ふうん。しかし、変わった空間だよな。それこそヒーローと悪の幹部、魔王に悪魔、勇者に王様、お姫様。あらゆる物語がここに集まっているのにともに生きている。こんなふうにしていて、さらに世界から逃れている。ま、トラブルが多ければ世界から認識されてしまうから下手に騒げないのかもしれない。でもそれにしたっておかしすぎる」


 永遠さんのことだこれまでの経験をもとに色々なことを踏まえての発現なのだろう。経験豊かな永遠さんがそういうのだからこの場所はよっぽど変わったことなのだ。

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