犬も歩けば・ミュージカル・山本
犬も歩けば人に当たる。そう思うほどに人があふれかえる中でその少年はフラフラとそれこそ本当に人にぶつかり続けていた。
それに気がついた親たちも慌てふためき始めてあたりは騒然とし始める。そんな喧騒に気がつく様子もなくてその姿は異様に見える。それはなにかに引き寄せられているようにもみえる。
「どこかを目指している?」
それは先程みた園外にある物語の拠点の方向。それが何を意味しているのか情報が少なすぎる。近くに
さながらミュージカルの悲壮なシーンのようになったこの場を収めることができるだろうかと氷姫は一瞬だけ思案する。原因を取り除くのが一番だと考えを導き出したのはすぐのことだ。目くらましのために空中に氷の塊を形成してそれを爆ぜさせる。
騒然としていたその場は、舞い落ちる氷の欠片に目を奪われた。その隙きに少年の元へ駆け寄ると少年を抱えてその場から離れる。
同じくらいの体格の彼を抱えるのは骨が折れたがそこは語り部の能力を使えばなんとでもなる。きになったのは、氷の力を使っているのにも関わらず少年の表情が揺らぐことがなかったところだ。
「君、名前は?話せる?」
ブルドーザーの影に隠れた氷姫は少年に話し掛ける。
「
話して入るがどこかぼんやりと遠くを見つめている。自分のことを話しているのに虚ろ気なその様子はやはり物語に取り憑かれているようにも思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます