レッツ・神・ズッ友

「しつこいっ!」


 じりじりと近づいていった結果、再び離れようと攻撃の手が緩む。その瞬間をたすくは逃さない。その瞬間をひたすらに待っていた。


 能力を切り替える。盗賊の上位職である忍者に転職する。防御を一旦捨ててスピードと攻撃主体の職業に切り替える。


「なんでっ!?」


 魔女はそれに驚いたみたいだった。このときのために隠してきた職業のひとつだ。驚いてくれないと困りもする。


「あなたいくつ能力持ってるのよ。そんな神にでもなったとでも言うの!?」


 魔女の力も大概だと思うのだけれど、奥深くではなくひたすらに物語の上澄みをすくっているだけの佑の力は異様に思えるのだろう。それに、最初にコピーしたこの転職能力の幅が広すぎるのだ。そしてそれは、魔女の弟子の力でもあるはずなのだ。


「同じ力にしてもあの子に比べて力の幅と強度が強すぎるのよっ!」


 必死に攻撃を繰り出し抵抗するがもう遅い。至近距離まで近づいてしまえば魔法が自らに当たる可能性があり、容易に使えないだろう。


「はぁあぁぁ!」


 盾が変わった刀に力を込める。持っている力のすべてを込めて魔女を倒すために。


「ちっ!」


 小さな悲鳴とともに、佑の持っていた刀が魔女の腹部を横一線する。特徴的な魔女のローブを切り裂いて魔女の肉を切り裂いたのが感触でわかった。


「嘘でしょ。私が負けるなんて信じられない。まだ消えるわけにはいかないと言うのに。ほんと特別すぎるボーイよね。あなたって」


 彼女の物語はひとつではないのだろう。魔女共有のもの。だから消えるのは彼女ひとりなのだ。


「どうせ、この先もあなたたちには厄災が訪れ続けるっていうのに抵抗するだけ無駄なのに。諦めてしまえば楽になれるのに」


 そう言葉を遺して魔女は光の粒に変わっていった。


「おい佑やったな」


 そこには氷姫ひめを連れた永遠とわがいた。


「さすがは俺のズッ友。あれを倒しちゃうんだもんなぁ。さて竜の子を回収しに行こうぜ」

「ああ。行こうか。多分あの小屋の中だ」


 大人しくしている氷姫に笑いかける。しかし、反応が薄い。


「大丈夫?」


 こくりとうなずく氷姫に少しだけ不安を覚えながら。先程のことがショックだったんだろうと納得して先へと進む。


「レッツ・ゴー!」


 ひとり調子がいい永遠に続いた。

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