人魚姫・お兄ちゃん・井戸端会議

「ねえ。さっきのなんだったんだろうね」


 氷姫ひめが不安そうにしているけれど、気にするなとしか言えないのが若干悔しかったりもする。


「あらお兄ちゃんたち。大丈夫だった?」


 井戸端会議をしていたであろうおばちゃん集団がそんな氷姫の様子をみて心配になったのか声をかけてきてくれる。


「さっき変なオジサンがいたでしょう?私達も声かけたんだけど、怒られちゃって。なんだっていうのよねぇ」


 同意を求められても曖昧にうなずくことしかできない。よくわからないけれど、妙な人と関わらなければいいのだと逃げてきたのだからこれ以上関わりたくはない。


「なんかあったのか。あれ」


 そんな中で永遠とわは馴染もうとしているのがグイグイと近寄っていく。


「あら。イケメンさんね。なんか人魚姫を見たとかで人生狂わされたって叫んでたわよ。そんな妄想を追い求めた結果、ひとりっきりになってだれも相手してくれなくなったって」

「そうそう。なんか奥さんも子ども連れて実家に帰っちゃったとかで、ずっとひとりだって。ぶつぶつ言ってたわよ」


 なんだかどこにでもありそうな話だけど。人魚姫の部分だけが気になった。物語に関係していそうなワードだ。


「うーん。気になるけど。それどころじゃないだろう。先行こう」


 今は人魚姫より隆司りゅうじくんだ。

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