まっしぐら・ヘソクリ・ついでに
黄昏書店に入ると
しばらくは大人しくしてそうなので、
材料は帰る途中で返ってきた。作るのは
『おんなじ味にはできないよ?』
そう心配そうに
やんわりとそのことを告げると氷姫は安心したように見えた。そして、今はやる気に満ち溢れた目をしている。
「おい。ヘソクリ探そうぜ。あの人なら結構なもの隠してそうじゃないか。金目のものとかじゃなくて、もっと大掛かりな物語の本とか。危ない物語とか」
相変わらずの永遠のことは無視して氷姫の動きをただただ見守る。
「おい。あからさまに無視すんなって。ただの冗談じゃないか」
冗談に聞こえなかったのだから仕方ない。こいつなら本当にやりかねないと思っている。
「なー。佑くん。引き続き無視ですかー。本当になにかないかさがしちゃいますよー。ついでに本物のヘソクリも」
そう言ってガサゴソと、本屋の中をあさり始めた。商品の隙間にそんなものがあるはずもないのだけれど。ハナからそんなものは期待していなくて。暇だから時間を潰そうとしているだけなのかもしれないが。
「ねえ。これでいいのかな」
氷姫に話しかけれられて散漫していた意識が料理へと向かう。
「ああ。大丈夫そうだね」
なかなかの手際の良さに出来上がるものが期待できそうだった。
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