家来・家計簿・まちがいさがし

「おっ。ボーイやる気だなぁ」


 脚本家に囃し立てまくられて、気が散りそうになるのを必死に堪える。剣をただ振り下ろすのみだ。

 物語を切り裂くはずのそれは、しっかりと彼の腕に受け止められてしまって、驚きを隠せない。


「おい。こんなもんなのかよ。騎士様っていうのは軟弱なんだなぁ」


 いつのまにかヘイトがたすくへ向いているのはなぜなのだろうか。テストがどうとか、言っていた彼と同一人物なのか。

 それともどこかで物語が切り替わってしまっているのだろうか。場面が変われば人が変わったように感じることもあるだろうけれど。


「まちがいさがしじゃなかいか。これじゃあ」


 物語の場面がこの状況でいきなり切り替わることがあるのだろうか。あるのだとすればそれは人為的なものを感じざるを得ない。


「ボーイ。何を言っているんだ。はやくそいつをやってしまえー」

「やってしまえー!」


 氷姫ひめも一緒になって囃し立ててくる。剣を素手で止められたんだぞと思わないでもないが、そこは語り部としての力不足だとでも言うのだろうか。


 物理がダメなら、違う角度から。


「ファイアーアロー!」


 すぐさま転職して、炎の矢を魔法で放つ。それは流石に聞いたのか、彼が燃え始める。そしてそれを消そうと必死になっている。


「おい。なんだよこれ。急に家来とか出しやがってよ。卑怯だぞ」


 転職のことを家来を呼び出したとかなんかと勘違いしているのだろうか。


「おい。せっかく付けてた家計簿が燃えるだろうが。てめえがつけろって言ってたからつけてんのに。なんてことしてくれんだよ」


 そいう設定なのだろうか。悪ぶっているが実は真面目っていうやつ。それなら良いやつなのかも知れないな。なんて思ってしまった。

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