三兄弟・文明・結局

「ボーイは三兄弟なのかな」


 おやつを食べ終えると突然そんな話題を振ってくる脚本家を何を言っているんだと言った目で見てしまった。


「おや。違うのか。ってきり年の離れた兄弟かと」


 そこまで聞いてようやく隆司くんと氷姫ひめのことだと気がついて納得する。


「違いますよ。隆司くんはつとむさんの……」


 なんなのだろう。気にしたことは多々合ったのだけれど。突き詰めたことはなかった。だからその関係性は知らないままだ。


「彼に息子がいたなんて話は知らないのだけれどね」


 そうなのか。だったらなおさら謎だ。


「とにかく、ふたりとは兄妹じゃないですよ」

「そうなのか。あんまりにも仲がよさそうだったからな。意外だな」


 そう見えたのか。そう見えたのなら嬉しいかも知れない。兄妹がいた記憶はないのだけれど、いたならこんな感じなのかと思うと楽しいなと思えた。


「さ。そろそろ。隠れないと警備員が見回る時間だ。舞台袖に隠れに行くぞ」

「は、はい」


 急に話が切り替わって焦ってしまう。一生懸命想像していたのが恥ずかしくなるくらいだ。


「ほら。どうした。いくぞ」


 結局ペースを狂わされっぱなしだ。そそくさと慎重にかつ大胆に移動する脚本家のあとを小走りで付いていく。


「そこを曲がって、裏から入るぞ」


 客としてくれば決して入ることのない場所に少しだけわくわくしながら、舞台上へと上がる。そうしてから舞台袖へと移動した。


「そこの幕の隙間にでも隠れていると良い。幕にさわるなよ。簡単に揺れるからな」


 こくりとうなずいて。幕と幕の間に隠れる。あとはじっと待ち続けるだけ。文明がこれだけ発達しているのに、やることは待つだけ。やることはなく。目的は非科学的な幽霊が出るのを待つことだ。


 しばらくすると電気が消えた。音もしなくて、静寂と闇だけがたすくを包む。脚本家がどこにいるのかもわからない。


 延々とも感じる時間が流れていくをただ感じていた。

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