ホテル・ゼリー・魔法使い

「ゼリー!ゼリー!」


 今日も食いしん坊っぷりを発揮している隆司りゅうじくんは朝から元気だった。勉さんはそれを阻止しているようで困った顔をしながら冷蔵庫に近づけない様に壁になっている。それを微笑ましく眺めていると隆司くんがこちらに気が付いたみたいだ。


たすくもゼリー食べたいでしょ?」


 味方を増やす作戦らしい。小さいのに頭が回るものだと感心する。


「エクスカリバーってやつはどこにけば倒せるんだよ。今日の黄昏時までまってられない。こっちから攻め込んでやる」


 永遠とわはそう息巻いているが相手の戦力も狙いもはっきりしていないというのにどうしていいかも判断できない。


「あんまりオススメしなよ。まだ七日間戦争も終わってないし。今日も仕掛けてくるだろう。それを待っていてからそれに乗った方が得策かもしれない」

「そうな悠長なこと言ってる場合なのかよ。いつでも黄昏時にできる相手だぞ。世界がおかしくなっちまう」

「まあ、そういうと思って調べておいたんだけどね。この町の中心にあるホテルが今の拠点みたいだよ。上層階が怪しいね一般の人は立ち入り禁止になってるみたいだし」


 あっけらかんとすごいことをさらりと言ってのける勉さんにみんなが固まる。


「なんでそんなことわかるのよ。魔法使いじゃあるまいし」

「いやいや。われわれ語り部はある種魔法使いだろうに。いまさら何を言っているんだか」

「よっしゃ。よくわからないけど乗り込もうぜ。敵の大将ぶっとばせばそれまでだろ」

「あんたってそんなキャラだったのね。思ってたのと違うわ」


 夏希なつきがそう思うのに心の中で同意する。まったくその通りだ。


「だってなんかむかつくじゃないか。こっちが制約受けて力使ってるのにあんなに大盤振る舞いで力使っちゃって」


 そういえば、佑は自分以外の人がどうして語り部として力を使っているのか聞いたことがなかったことに気が付く。きっとそれぞれの理由があるんだろう程度にしか思っていなかった。いまさら聞くに聞けない。これが終わってからでもいいかなと、見送ることにした。

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