センチメンタル・参上!・ボーイ
「いないな」
「いないね。っていくか私たちは犯人の顔知らないんだけど。アイドルに変身した男なんだよね?そんなの見つかるの?」
そう言われてみたから気が付いた。防犯カメラの映像は不鮮明で顔まではわからなかった。というかそれほど騒ぎになっていないので、映像自体出回らなかったのだ。言われてから考えるも衣装によって違うアイドルになったりする能力だったりしたらもうどうしようもない。
「衣装盗むかもしれないから楽屋周りを張ろう」
「そんな単純なのかな。ま、ほかに当てがないんだからしょうがないよね。私もこれから先、それに怯えるのも嫌だしね」
「なんか、ここのホール思い出たくさんあったのにそれを汚されているみたいでいやなんだ」
センチメンタルな感情に包まれているのか、見たことのない顔をしているのを直視できない。アイドルだけあって顔は整っているのだ。それが複雑な表情をされると映える。
「参上!たぁ!」
「どうしたの?」
「いや、なんだかあの光景が気になって」
「あの親子?ふぅん?普通の親子じゃない」
そうなんだと思うのだけれど。どうしてか目が離せないでいる。
「ふむ。あながち見当違いなことを言っているわけじゃないように見えるが?」
「なあ。
妙な質問だ。そりゃ、召喚された物語の登場人物だと紹介されたのだからそう思うけれど。
「へ?そういうこと?」
「なによ。どういうことよ」
「多分なんだけど」
いや、でもこういった場合どうするのが正解なのだろう。こんなことなら
「なんなのよ。さっきからふたりでわかっちゃったふりして」
ふりじゃないのだけれど。どう説明していいかもわからない。いや、説明はできるけれど。どうしてそうなっているかは分からない。
「あのボーイたちはおそらく物語だよ夏希」
喜美子が代わりに言ってくれた。でも、だからどうなのだと問われても答えられそうもなかった。
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